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【小論文解答】:2023年/川崎医科大学/医学部/本試験

 人間の見識、品格を高めるには「自分自身から自由になる」ことが必要だと考える。人間は自己が得た知識や、その知識から作り上げた価値観を大切にして生きている。それはアイデンティティを形成し、自信を持って生きていく上で重要なことだが、自分の視野を狭め、自分の価値観を相手に一方的に押し付け、相手の意見に耳を傾けようとしない、といった弊害を生み出す要因ともなる。
 課題文では人間の見識、品格を高める要点として「こちらの全体と、あちらの全体を並べて、それぞれのいいところと悪いところをあまさず見なくてはならない」と述べているが、それは「自分自身から自由になる」ことと同じである。こちらの全体とあちらの全体を並べるためには、両者が「対等な関係」であることを受け容れなければならない。自分の知識や価値観にこだわる人はおおむね「相手より自分が上だ」という考えが強く、自己と他者とを対等に並べることができない。自己と他者との対等性が受け容れられないと、自己の「悪いところ」を真摯に見つめなおすこともできない。このように自分に固執し続けると人間としての成長が止まり、見識や品格を高めることは難しくなると私は考える。
 自分の知識や価値観から自由になると、自分を謙虚に見直すことが可能になるし、他者の知識や価値観に敬意を払えるようになる。そして他者の知識や価値観によって自分の知識や価値観をより大きな視点で捉え、他者がより受け入れやすくなるような提案を行えるようになる。そうした自己のあり方を他者の側から見た時に「この人には見識や品格がある」ということになるのだと私は考える。
 「自分自身から自由になる」ことは医師の資質として非常に重要である。対等性を踏まえて患者と向き合い、その言葉に耳を傾け、両者の知識や価値観の全体を並べてすり合わせ、最適解を求めていく。そうした資質を私も身につけ見識と品格を高めていきたい。(791字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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