高齢化率が30%に達する現在、高齢者との共生が社会の重要な課題となりつつある。高齢者は老化や精神的不安、慢性疾患や認知症の問題を抱えて暮らす場合が多いが、彼らが社会の中で充実した人生を送るためには、社会の側からのサポート、特に医療的なサポートが大きな役割を果たすと私は考える。
まず老化に関しては「健康寿命」延長のための予防医学や運動の推奨が重要となる。慢性疾患を予防し一定の筋力を保持することでフレイル状態を遅らせられれば、その期間は高齢でも自立や自活や社会的貢献が可能となり、それが高齢者の人生を充実させる。そのため医師はコ・メディカルの人々と協力しつつ、高齢者の「健康寿命」維持のために積極的に関与し、サポートを行う必要がある。
次に精神的不安に関して。高齢者は病気や衰弱、社会的役割の喪失等をきっかけとして精神的不安を抱えるようになる。医師は彼らの健康を支えつつ、彼らを尊厳ある個人としてどこまでも尊重する姿勢を示しながら不安や悩みに共感し、励ますことを通して前向きに生きるためのサポートを行う必要がある。
次に慢性疾患に関して。高齢者は基本的に複数の慢性疾患を抱えて暮らすことが多くなる。医師はそれらの疾患を「治療」「回復」の対象としてではなく「維持」「共存」の対象として捉え、高齢者の「一病息災」「多病息災」を如何にして実現するか、という観点から自らの知識と技術を駆使して高齢者の社会的接点を維持し、彼らが笑顔で暮らせる方策を提案・実行していくことが求められる。
最後に認知症に関して。認知症の高齢者は日々増え続けているが、社会の側は彼らとの共存のための社会モデルをまだ確立できていない。医師は認知症患者の身体的・精神的な特性に関して社会に積極的に周知を図り、共生可能な存在として彼らの価値をアピールしつつ、共生ネットワークを主導する役割を果たすことが求められる、と私は考える。(790字)
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