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【小論文解答】:2019年/川崎医科大学/医学部/本試験

 医師と模擬患者のコミュニケーションに関しては、主として医師の側に問題があると考える。会話全体を通して、今回の医師は基本的に患者を「病人」という観点からしか捉えていない。従って会話の内容も「医師として病人が健康を取り戻すために何が必要か」を説明することに終始している。だが患者は固有の人生を生きるひとりの人間であり、全人的な存在である。医師は患者のそうした側面を配慮したコミュニケーションを行う必要があるし、医師に対する患者の信頼はそうした医師の振る舞いによって生じるのである。
 今回の医師の言動を具体的に検証すると、まず彼は患者の肺のレントゲンを患者自身に見せず、病名およびその内容の説明も行わず、入院を前提とした話をいきなり始めている。これでは患者は自分の肺の状態もわからず、病気の内容も原因も分からないまま、いきなり入院を勧められるのだから、納得しにくいし不安に駆られるだろう。そこで患者は入院の必要性に疑問を持ち、彼に問いかけるが、彼は症状が悪化することを前提にしてただ入院を勧めるだけで、患者の社会人としての生活に配慮した質問も行っていない。しかもどれくらいの期間入院するのか、入院中にどのような治療を行うのかについても一切患者には提示していない。最後に、今すぐ入院は無理であると言う患者に対して、「悪化した時に対応できない」「いのちに危険がおよぶ場合もある」と脅すだけで、なぜ患者がすぐに入院できないのかも聞かず、可能な対処をともに考えるような態度も示さない。こうしたコミュニケーションは患者への共感力や尊厳の理解を欠いた、一方的なものだと考える。
 医師の仕事は単に病気を治すことではなく、治療を通して患者の人生の幸福に貢献することだと私は思う。そしてそのためには、患者を全人的な視点でとらえ、その思いや声に耳を傾け、その人生を支えるコミュニケーションを心がける必要がある、と私は思う。(792字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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