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【小論文解答】:2017年/川崎医科大学/医学部/本試験

(問1)
 「健康長寿社会」とは、高齢者が最後まで健康な状態で長寿を全うできる社会のことである。現在平均寿命と健康寿命との差は10年ほどであるが、健康寿命を延ばし生活の質を向上させることで、多くの高齢者が最後まで納得のゆく人生を送れることが「健康長寿社会」の理想である。そのためには予防医学の充実や先進的な医療サービスの提供、そして社会の各人が「健康と人生」とのつながりを自覚し行動することが求められるのである。(199字)

(問2)
 私は下線部(イ)について、同意できる部分とできない部分がある。たしかに社会の一人ひとりが当事者意識を持って、自己の健康に対する自覚を持ち努力を行うことなしに「健康長寿社会」を実現することはできない。本文にもあるが、どれほど行政が医療制度を改善し、医療提供者が先制医療の実現のために先導的な役割を果たしたとしても、社会の各人が自己の生活態度を改めないならば、最終的には「対症療法」的な対処しか行えない。多少は健康寿命を延ばせるかもしれないが、最後までQOLを維持したまま元気に暮らせる社会を作る、という当初の目的は達成できない。これは医療費を削減するという財政上の点においても、充実した人生を送るという個人の生の点においても、大きな損失となる。
 しかし一方で、私は個人個人の自覚や努力を強く求めるということも難しいのではないかと私は考える。強い意志を持って自分をコントロールできる人はそれほど多くない。誘惑に負けることもあるし、避けられない事情で規則的な生活を送れないこともある。そうした意志の弱さや困難な事情を互いに支え合って乗り越えていくということが、「健康長寿社会」の実現のためには必要なのだと私は思う。医師はその支え合う輪の中にいて、先導者としてではなく「共感者」として社会の人々と向き合い、共に「最後まで幸福に生きる」意味を考えていく。それが「健康長寿社会」の実現につながるのだ、と私は結論付ける。(598字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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