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【小論文解答】:2008年/獨協医科大学/医学部/センター利用2日目

 このベテラン医師が配慮した点として、まず患者の尊厳を重視したということが挙げられる。患者が病院に運ばれた時、既に死亡は確定していた筈である。その患者に対して挿管をせず、点滴も施さなかったのは、死んだ個人をむやみに傷付けて、死者としての尊厳を奪わないようにと考えたからである。少しでも自然な状態で体を保たれることは、死者に対する最大の配慮であると私は考える。次に配慮した点として、患者の息子の心を乱すことなく、母親の死を受け入れさせるよう工夫したことが挙げられる。心臓マッサージを続けたのは、医師が最初から諦めて処置を放棄した状態で対面した場合に息子が受けるであろうショックを和らげるためである。医師がきちんと誠意ある対応をし、それでも駄目であったというプロセスがあってこそ、息子は母親の死をある程度納得ゆく形で受け入れられるのである。また「何か病気があったんですか?」という問いかけは、やり取りの中で息子が穏やかに母親の死を受け入れられるように、周到に発せられていると考えられる。そして息子が母親の死を納得した瞬間に、看護婦に目配せし、研修医をこづいて、死という厳粛な時間を演出し、息子と母親とが静かに向き合えるようにしたと考えられる。
 このように、延命措置を長引かせず、死者を傷付けるようなこともせず、息子に絶望や希望を抱かせず、穏やかに死を受け入れられる演出は、非常に大切なことであると思う。(595字)



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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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