「正確さとわかりやすさ」は両立することが難しい。正確さを優先させればわかりにくくなり、わかりやすさを優先させれば正確さが失われる。しかしあらゆる説明にはこの二つの要素はともに必要であり、一方の要素だけの説明は説明として機能しない。どちらを優先させるかは状況で異なる。これをインフォームド・コンセントの例で考えてみる。
インフォームド・コンセントは患者が自己の状態を踏まえた上で、治療方針や人生のあり方を決定するために行われる、医療側からの情報提供である。この場合、自己の状況を正確に理解するためには、情報自体が正確でならなければならない。しかし正確さにこだわれば言葉が難解になり、患者自身の自己理解を妨げる。かと言って易しく言い換えてばかりでは患者が自己の状態を正確に把握することができない、という状態に陥るのである。
なるだけ理想的な自己決定が行われるという面で考えれば、多少難しくても正確さを優先することはとても大事なことである。安易にわかりやすくしようとせず、正確な情報自体をきちんと理解してもらう努力を払うことが患者のためである。その意味で正確さはわかりやすさに優先するのだ、と私は思う。(492字)
※本来は400字の解答だが、500字に改変している。
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