日本は現在、高齢化率約25%で65歳以上が3000万人を超える高齢化社会である。こうした高齢者の大半は、何らかの持病を抱えながら、自活を行ったり、自立した生活を営んでいる。また後期高齢者になると、寝たり起きたりや、寝たきりの状態で、家族と暮らすことも多くなる。医療従事者は、このような高齢化社会の現状をきちんと理解し、さまざまな形で彼らのQOLを向上させるような医療を行ってゆく必要があると私は考える。
特に重視しなければならないのは、家から病院までの距離が遠く、容易に来院できない高齢者に対する訪問診療である。体力の衰えや交通事情の悪化によって、来院が困難となった患者にとって、医師の往診は文字通り「命綱」となる。家族と同居している場合には、家族と密に連絡を取りながら、またそうでない場合は近隣の人と連携しながら、医師は患者の状態を正確に把握し、容態の急変にも対応できるよう心がけておくことが重要となる。またその際には単に医療的な側面だけでなく介護・福祉といった多様な側面から患者を総合的に捉え、各方面の担当者と協力して患者の生活の質を維持・向上させる必要がある。
次に重視するべきは、慢性疾患を抱えた患者に対する長期的な視点に立った医療である。高齢者の疾患は加齢による慢性的なものが多く、その大半が完治・回復の困難なものである。したがって治療の方針も、完治や回復を目指すのではなく、そうした慢性疾患の進行を遅らせながら、いかに高齢者のQOLを保ってゆくのかということが焦点となる。一病息災や多病息災のための良きアドバイザーとなることが、医師には求められている。
最後に、地域の開業医と大病院との連携が重視される。疾病の急変時には開業医から大病院へ、そしてターミナルケアのための在宅医療への切り替えの際には大病院から開業医へと連携し、最後まで高齢者への十分なサポートが出来る体制作りが必要だと考える。(793字)
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