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【小論文解答】:2006年/昭和大学/医学部/本試験

 私が患者の立場で自分の病名や症状の告知を考えた場合、医師にはありのままの情報を包み隠さず伝えて欲しいと思うだろう。何故なら自分の人生は自分のものである以上、正確な情報に基づいて自分なりに納得の行く判断を自分で下したいと考えるからである。そうした患者の自己決定権や知る権利を保障するためには、医師は必ず病名や症状についての正しい情報を伝え、患者の選択に歪みが生じないようにしなければならない筈である。
 「嘘も方便」という考え方は、例えば癌の余命宣告のように、それを伝えることで患者が大きなショックを受けると思われる場合に、情報を伝えなかったり表現を和らげたりして患者の精神的苦痛を軽減するという目的で主張される。しかし症状が悪化してゆく中で、患者が何も知らされずに自分の症状と向き合うことは大変苦痛であるし、敢えて告知しない医師や家族のことを気遣って、不安を押し隠すことにもつながりかねない。知らないことによる精神的苦痛は、知ることによる精神的苦痛よりも大きいのではないかと私は思う。
 もちろん、情報を伝える医師の側には、情報を提供することで生じる患者の様々な問題に責任を持って対処するという覚悟が必要である。正しい情報を知った上で、患者が自分の人生に向き合うその大変さを十分に理解し、全力で支えるという意思を明確に患者に伝えることによって、真実を伝えることの本当の価値が生じるのだ、と私は結論付ける。(594字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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