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【小論文解答】:2010年/藤田保健衛生大学/医学部/本試験(改)

 物事が同時進行するような複雑な事態を避け、目の前のひとつひとつの事に集中して取り組むことが大切であるという筆者の考え方は、一部の事象については全く当てはまると思う。携帯電話をかけながら自動車の運転をするのは危険であるし、テレビを見ながら勉強しても頭には入って来ないだろう。そうした場合には運転や勉強といったひとつの事に集中して、最大限の効果を挙げることが望ましい。しかし現実には、同時進行しながらやって行かざるを得ないこともたくさんある。その際たる職業は医師であると私は考える。
 例えば患者を診察する時、医師は患者の様子やデータから様々な情報を同時進行で引き出さなければならない。話を聞きながら触診し、聴診器を当て、データを見ながら考えられる病気を幾つか想定し、絞り込むために必要な次の処置を考える。こうしたことは通常同時進行で行われるし、そのどれも均等に注意を払わなければ、きちんとした病気の特定も出来ないし、最善の治療法も思いつかない。その意味で医師には、同時進行能力とでも呼べるような資質が要求されており、この能力が高いほど良い医師になれる筈である。
 その一方で、医師にはまた目の前の一つの事に集中することも求められている。ある患者の手術の最中に他の患者のことを考えていたらミスを犯す可能性がある。他の患者のことが気になって、目の前の患者の診察がおろそかになれば、適切な処置を行えない。その意味で医師には、目の前の患者に集中して他のことを頭から排除する能力も求められる。
 上記二つの能力はそれぞれ次元を異にしており、同列に扱うことが出来ない。むしろ人間はこの二つの能力を上手に使い分けながら現実に対処しなければならないと考える方が妥当なのではないかと思う。その意味で「複雑であること」に対する筆者の考え方は物事を単純化し過ぎているという意味で、不十分だったのではないかと私は結論付ける。(793字)

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玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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