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【小論文解答】:2023年/聖マリアンナ医科大学/医学部/2月5日分

 私は日本の移植医療の現状を踏まえ、日本における心停止後または脳死下での臓器提供による移植医療について、多面的・総合的な改善を行うことで、より積極的に提供数・移植数を増やしていく必要があると考えた。
 ①で述べられているように、日本国内での臓器提供数は他の先進国に比べて極端に少ない。その理由のひとつとして、日本固有の死生観があると思われる。日本では心停止や脳死で身体機能が停止しても、その肉体を単なる物体とは捉えずに「魂の留まったもの」と捉える傾向がある。その身体は物理的には死体であっても観念的には「個人」そのものなので、それを侵襲することに抵抗感を覚え、臓器提供が進まないのではないかと考える。
 しかし以前に比べると、日本でも「臓器提供」に対する理解が進み、人々の抵抗感も薄らぎつつあるように思われる。それにも関わらず提供数や移植数が増加しない背景には、②のような制度的な問題もあると思われる。日本は現在、韓国や米国と同様、臓器提供に際してオプト・イン方式を採用しているが、先ほど述べた保守的な死生観を持つ日本人にとっては、提供を遠ざけるひとつの要因となりうる。オプト・アウト方式で提供数が多くなる傾向があるなら、日本でもオプト・アウト方式を進めていくことが必要だと考える。
 また③を見ると、日本では移植希望者に対して移植が実現した人の数が極端に少ないということがわかるが、これにはドナーの数が少ないという問題以外に、移植に対応できる医療機関や医師の数が少ない、という問題もあると思われる。心停止後や脳死下での臓器提供に速やかに対応できる医療機関や医師の数を増やし、潜在的な提供希望者がその希望を実現しやすい環境を整えることで、移植数を増やすことは可能であると私は考える。
 このように、①で示された現状に対して、②と③の孕む問題点を克服することで、④のような待機年数の問題を解消していくことが必要である。臓器移植はドナーとレシピエントをつなぐ「命のバトン」の役割を果たす。そのバトンの受け渡しのしくみを工夫し、双方の希望が叶う事例を増やすことが臓器提供への忌避感を軽減させるひとつの解決策になる。それを実現するために、日本の医療はこれから制度面や機能面の問題を多面的・総合的に改善し、移植医療が人々の幸福に貢献することを証明する必要がある。これが現在の日本の移植医療に対する私の考えである。(992字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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