医療は、人々の生活の〈できる〉を支えることで〈したい〉の可能性を高める役割を果たしていると私は考える。本文にあるルソーの「自由」の話を医療の観点で捉え直すと、「自己決定権」や「ナラティブ」という言葉に該当する。患者が自由であるとは、自己決定権を行使して自分らしいナラティブな人生を継続できるということであり、それは〈したい〉ことが〈できる〉という状態である。
しかし患者は自己の抱えている病気や怪我や障害や加齢による衰弱といった心身的な問題により〈できる〉が妨げられている。医療はそうした患者に対して、医療の力を行使して彼らの〈できる〉ことを増やす。そして患者は〈できる〉ことが増えると〈したい〉ことがさらに広がり、結果としてより自由に生きることが可能となる。医療はこのような仕方で患者の人生の充実に貢献している。
もちろん、医療は患者の〈したい〉を全て叶えることはできない。ただ、これまでできなかったことが少しでも〈できる〉ようになるだけでも、患者にとっては大きな喜びであり、それが人生の充実につながることを、医療従事者は十分に自覚して患者と向き合うことが大切なのだと私は考える。進歩を続ける医療の成果を十分に理解し、それを目の前の患者にどのように生かせばこれまでできなかったことが〈できる〉ようになるのかを常に考え工夫を続けることで、患者の自由を高めることが医療の使命であると私は考える。(594字)
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