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【小論文解答】:2023年/久留米大学/医学部/本試験(※コメント付き)

 まず医師に必要な資質とは「献身の精神をもっていること」だと私は考える。医師は人びとが健康であること、患者が病気や怪我から回復して幸福を手に入れることを自分の生きがいと考え、それを可能にするために知識や技術を磨き、患者の要望に可能な限り応える。その根底には「自分のことよりも患者のことを大切に考える」という信念が求められる。もちろん、医師という職業は肉体的に精神的にも過酷であり、人の命に関わるという重圧や責任感も圧し掛かってくる。時にはそうしたことから解放されて、手を抜きたい、楽をしたい、自分のことを大事にしたいと考えることも当然あるだろう。しかし患者が困っている時、助けを求めている時には、なんとかして患者のことを助けたいと考えて、自分のことを後回しにして患者の元に駆け付ける。そういった「献身の精神」を医師は資質として持っている必要があると思う。それは「思いやり」よりもっと強い気持ちである。
 次に医師に必要な適性とは「陽気さ」であると私は考える。病院を訪れる患者、病気や怪我を抱えている患者の大半は、自分の抱えている心身の問題により気が弱ったり荒んだりする。そうした時に医師の明るい笑顔や元気な声に励まされ、自分の気持ちも前向きに明るくなる。患者は医師の「陽気さ」を医師の「前向きさ」と考え、その陽気さに自分の回復の可能性を託す。それが医師と患者の信頼関係の一つの契機となり、治療の成功可能性を高める。医師が横柄であったり、事務的もしくは機械的な対応しかしなかったり、暗かったりした場合、患者は怒りや不満や不安に駆られ、医師と良好な関係を築けない。その意味で陽気さは医師に必要な適性である。
 ただ、「献身の精神」も「陽気さ」も最初からその人に備わっているわけではない。親や環境の影響もあるが、自分の努力で手に入れる部分もあるだろう。私もこの資質と適性を手に入れるために努力していきたい。(796字)


〔※コメント〕2023年の小論文について。点数開示をしてもらった生徒から「小論文の点数が25点だった」という報告を数点受けた。満点は50点で平均は40点弱(たぶん今年は若干下がる)なので、25点は平均より大幅に下である。原因として考えられるのは「資質」と「適性」を分けて考えず、「資質(適性)を2つ書けばよい」と考えて記述を行ったか、「資質(適性)」の話を1つだけ書いてそれで800字を埋めたか(もしくは埋め切れずに字数不足のまま提出したか)のいずれかであると思われる。こうした設問に出会った場合、「そもそもなぜ『資質』と『適性』を別々に聞いているのか?」と考えられることがポイントとなる。
 「資質」とは「生まれつきの性質や才能」のことだが、医系小論文では「あるべき人間としての性質(精神性・心構え)」に関することであると理解してよい。「適性」とは「性質や性格がそのことに適していること」「ある事柄に適した性質や性格」、つまり「向き不向き」に関することであると理解してよい。ただし「適性」に関しては通常は「資質」と同じものとして扱われ、「適性」として独立に問われることは珍しい。
 しかし精神性であっても性格であっても、大半は生まれつきふさわしいものを持っているわけではなく、自分で意識して(努力して)改変・改善していくものである。その意味で努力さえできるのなら、医師に向かない人はいない、と言うこともできる。

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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