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【小論文解答】:2022年/北里大学/医学部/2月5日分

〔問1〕(※解答例)
感情的な安心感と科学的な安全性との乖離(19字)

〔問2〕
 医療を行う際に留意すべきは、治療や投薬の効果とリスクについての十分な説明を行うことである。一般的に治療や投薬は安全性を重視しすぎると問題が発生しにくい反面効果が薄くなる。一方リスクの高い選択をすれば効果は高まるものの問題が発生しやすい。最終的な選択は患者の自己決定権に委ねられる以上、患者が最善の選択が行えるよう、安全基準と効果の関係、そしてリスクの説明は十分に理解してもらえるまで行う必要がある。(199字)

〔問3〕
 医療においては、安全は安心に可能な限り寄り添うことが望ましいと私は考える。筆者は文章の中で、感情的な安心感と科学的な安全性との間には乖離があると述べ、科学技術と社会の安全性については科学的に十分な理解をした上で、安心という主観的な言葉ではなく安全性という定量的・科学的な根拠に基づく判断が必要であると結論づけている。
 しかし医療においては、安全性という定量的・科学的な判断に基づく対処が、治療を受ける患者当人のナラティブな生にとって妥当でなければ、治療として意味をなさないというケースが生じる。例えば手術をすれば99%の確率で回復するなら、この手術という選択は科学的には「安全」と言えるだろう。しかし患者にとっては、残りの1%に自分が入らないという確証が得られない以上、この選択に「安心」することはできない。自分の命は固有のものであり、失ってしまえば終わりであるという恐怖はどこまでもついて回る。
 その時に、医師が患者に対して科学的な観点からどれほど「安全」を主張し、患者を説得したとしても、そして患者がどれほどその安全性を理解したとしても、だからと言って手術を選択するとは限らない。そしてその場合に医師は「安全性」に基づく判断を捨て、手術という選択を諦める必要がある。ただしそれは患者の治療を諦めるということであってはならない。患者が患者自身にとって「安心」できるような選択の中で、少しでも医療としての「安全性」を高めていく努力を継続することが、医師には求められるのである。
 またこうした対処とは別に、患者の主観的な不安の内容に丁寧に耳を傾け、共感した上で、その思いと医療の「科学的な安全性」によって解消していく説明を行うことで、患者の「安心」の中身を変えていく、という方法もある。いずれにせよ医療においては、安全は安心に寄り添うものであるという認識が、医療者には重要である、と私は結論づける。(794字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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