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【小論文解答】:2020年/東京医科大学/医学部/本試験

 筆者の言う「人間が作り出す物語の尊さ」とは、他者に対する責任を自分の人生の一部として引き受け、強く生き続けることで、他者の物語を継続させることだと私は考えた。
 お母さんは不幸な事故で息子を亡くした。息子のために良かれと思って行った選択が息子を不幸にした。だからその選択を行った自分の罪は自分が一生負わなければならない。そして本当に罪を負うということは罪を負って自分が生き続けることに他ならない。そう思って罪悪感を一生背負う人生を選んだ。
 しかしこれは実質的に「息子を一生忘れない」という人生を選んだことと同じであり、その結果として息子は母親の人生の中で生き続ける、つまり物語を継続させることを可能にしたのだ、と考えることもできる。お母さんが罪悪感に駆られ自分も死んだとしたら、息子もそこで消えてなくなってしまう。また自分以外の誰かに責任をなすり付け、自己の責任を軽減させても、息子の人生は消えてなくなってしまう。罪悪感という形で亡くなった息子への責任を強く思い続けながら生き続ける限り、息子はかけがえのない存在として自分の中でいつまでも彼の物語を継続させることができる。つまり母親の負った苦しみが息子を救っている。それが筆者の考える「人間が作り出す物語の尊さ」なのだと考える。
 私はここに医師としての心構えを見る。患者ひとりひとりのことを忘れずに、責任を引き受けて生きていくことが大切だと思った。(595字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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