権利と義務には深いつながりがある。権利を有する者は、権利の行使に見合う義務を負う。なぜなら権利も義務も「他者との関係」において初めて成立する概念だからである。例えば自動車は運転免許を取得すれば誰でも運転する権利を有するが、運転に際しては交通ルールを遵守する義務を負う。交通ルールを守るという義務を果たせない人間は運転する権利を剥奪される。ルールを守れない人間は「他者との関係」を構築・維持できないからである。その意味で権利と義務はいずれも「他者」を前提としたものだと言える。
こうした自覚は、医師にとってはさらに重要であると思われる。医師は医師免許を取得すれば誰でも患者に対して診察を行い、診断を下し、患者に指示を出して守らせ、処方を書く権利を有する。外科であれば手術という形で患者の身体を切り開くことも権利として認められる。しかし一方で、医師としての権利の行使に際して、医師は一連の医療行為を通して患者の生命と健康を守り、病気や怪我を回復させるという義務を負うことになる。この義務を果たすことを他者である患者に対して約束するからこそ、患者は医師の指示に従い手術を受け入れるのだと私は考える。
患者もまた同じことが言える。患者が病院に来るということは、基本的に病院で出された医師の指示に従う義務を負う、というルールは共有していなければならない。それを無視して自分の権利ばかりを主張するなら、今度は医師の方が自分の義務を果たせない。医師と患者の両者が「病気や怪我を治す」という共通の目的の下でそれぞれの権利を主張し義務を果たすことで最善の結果が得られる。
こうした関係を築くためには、まず医師が自分の権利がどのような義務の下で成立しているのかを十分に自覚・認識し、責任を持って誠実に患者と向き合う必要がある。その覚悟と誠実さを通して、患者もまた自己の権利と義務を自覚する。私は将来医師として、そうした関係を患者と築いていきたいと思う。(813字)
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