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【小論文解答】:2022年/杏林大学/医学部/共通テスト利用/前期

 「妥協する」ことには良くない面もあるし良い面もあると私は考える。なぜなら妥協する動機や妥協の結果が自己や他者に悪影響を及ぼすならその妥協は良くないし、その逆ならその妥協は良いと考えるからである。例えば受験生である私が苦手科目の習得を面倒臭がって妥協すれば、希望した大学に入れないという結果を招くことになるし、食品衛生管理者が衛生チェックを面倒臭がって妥協し検査を怠れば、多くの人が健康被害に遭うことになる。医療においても同じことが言えるだろう。医師は自己の知識や技術の吸収・習得に妥協してはならないし、患者の病気の原因特定や治療法の選択に妥協してはならない。
 一方で、妥協には自己や他者を救う、という側面もある。結婚に対して相手に求める条件に妥協がなければ、その人はいつまで経っても結婚できない。妥協して結婚した方が得られる幸福が大きいこともある。自分だって不完全なのだから相手にばかり理想を求めてはいけない、という態度で相手と向き合った方が、相手と良い関係を築けることも多い。そういう妥協は決して悪いことではないし、むしろ積極的に行うべきであると私は思う。
 医師はこうした「妥協する」ことの両面性をきちんと理解し、場面に応じて適切に使い分けることが必要だと考える。治療に際して医師と患者が全く妥協せずそれぞれの考えに固執すれば、「患者を治す」という目的を実現できない可能性が高い。自分の考えとは異なっていても、相手の考えを受け入れ、妥協しつつ最適解を目指していく、という関係が構築できれば、医師と患者の双方とも良い結果を手に入れることができる。したがって医師に求められることは、自己の専門性と患者の固有性の間で妥協点を見いだし、その患者にとっての最善の治療法の模索を妥協なく行うことなのだと思う。そして今の私にとって必要なのは、そうした医師になるために妥協なき努力を続けることだ、と私は思った。(796字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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