生活習慣が多くの病気を引き起こしていることは、現在よく知られている。「生活習慣病」として知られている糖尿病や高血圧、癌や心疾患などの病気は、長年にわたる飲酒・喫煙・高脂肪高カロリー高塩分の食事の摂取などによって引き起こされる。一度発症すると治癒は困難で、高齢者に多く見られることから、今後高齢者の爆発的な増加が予想されている日本にとって、こうした生活習慣病にどのように対処するのかは、最も大きな問題である。
生活習慣病にかかる高齢者が多くなることは、高齢者自身のみならず、国家レベルにおいても大きな損害を被る。まず高齢者が生活習慣病を抱えながら生活することは、高齢者自身の生活の質を大幅に下げる。いくつもの病院に通院し、重症化すれば入院を余儀なくされる。それまで可能であった生活の大半を諦め、様々な制限の中で苦痛をこらえながら生活を送ることは、決して幸せであるとは言えない。そして国家レベルにおいては、高齢者の医療費を賄うための財源の確保が困難になり、医療制度の破綻を招く恐れが生じる。
こうした状況を回避するためには、若年層や中年層に対する「生活習慣の改善」が有効である。節酒・禁煙・バランスの取れた食事等の重要性をきちんと伝え、健康であることが人生にどれほど意味のあることなのかをきちんと理解してもらうことが重要となる。またそうした自覚を促す場として、これまで以上に健康診断の受診を勧める必要がある。
もちろん生活習慣病を既に発症した患者に対しても、そのQOLを維持・向上させ、少しでも充実した人生を送れるよう、様々な治療に力を入れてゆくことも当然必要である。しかしそれ以上に大切なのは、自分の力で自分の健康を守ることの意味を理解してもらうことであると私は考える。医療従事者は、人々の良きパートナーとして生活指導を行うことで、生活改善に積極的に取り組むきっかけとなってゆくべきだ、と私は考える。(790字)
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