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【小論文解答】:2022年/東海大学/医学部/本試験(2月13日分)

 私はこの絵画をルネ・マグリットの「最後の自画像」であると考えた。人生の最後を迎えた人間は、言わば存在としてはほとんど空っぽである。長い時間を経て擦り切れた自己の肉体と精神はもはや描くに値しない。その存在の空虚さこそが「今の自分」であることを、彼は「自己を描かない」というやり方で示したのではないか、と私には思われる。
 一方、存在感を持って描かれるのは「左手首と本」である。左手首は重々しく本の上に置かれている。この本はおそらく「自分という物語」「自己の歴史そのもの」である。彼が経験した様々な出来事や、その時々に感じた様々な思いは、すべてこの一冊の本の中に収められている。それは厚みがあり、豊かである。この「自分という物語」を彼は最後に自分自身の手で重々しく閉じる。その手の重さは自分自身の人生の重さに釣り合う重さでなければならない。この絵は「下書き」とされているが、彼にとってはすでに「完成品」であったのではないかと私には感じられる。手首を書き終えた時の彼の満足げな顔が、この絵を見て私にはふと浮かんだ。それは自分の意思で自分の人生を終わらせたことに対する、彼自身の満足感であったかも知れない。(497字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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