新型コロナウィルス感染拡大はこれまでの日本の医療のあり方を根底から変化させた。ここ数十年の間日本でも未知のウィルスが海外から持ち込まれることはあったが、すべて感染が拡大する前に抑え込まれた。しかし新型コロナウィルスは世界中にパンデミックを引き起こし、日本も例外とはならなかった。その結果日本の医療は「パンデミックが日常となった状況下で新規の感染を防止しつつ、通常の医療を両立させる」という難題を乗り越える必要が生じた。現在の日本の医療はその試行錯誤の中にあるのだと私は思う。
これまでの来院治療においても、インフルエンザが流行した際には専用窓口を設け、一般の患者とインフルエンザの患者を分離して感染拡大を防止するということはあったが、患者数も時期も限定的であった。しかし新型コロナウィルスは通年で感染が継続している上に患者数も多く、病院での感染可能性が格段に高くなった。そこで病院ではかなり厳格に一般の患者とコロナウィルス感染患者を分離する必要が生じた。加えてPCRといった検査対象者も多く来院することとなり、病院は「一般の患者」「コロナ患者」「検査希望者」それぞれに対応するため慢性的な人手不足と業務過剰状態に陥っている状態である。
さらに問題となるのは在宅の患者に対するサポートである。在宅医療の対象者は高齢で衰弱している場合が多く、コロナウィルスに感染すれば重篤化し、死に至る可能性が大きい。その上在宅患者の家には医師だけでなく介護・福祉関係者・家族など様々な人々が出入りするので、その過程でウィルスが持ち込まれる可能性も高くなる。厳格なコロナ感染防止対策をしつつ在宅患者のQOLを維持していくための工夫が求められていると思う。
コロナウィルスによる医療崩壊を防ぐためには、人々の日常生活での予防徹底による患者数減少が必須である。医療はそのための啓発活動を積極的に行っていく必要がある。(793字)
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