【用語解説】:「QOL」と「ナラティブ」と「尊厳」と「自己決定権」
■「QOL」について。
〇「QOL」とは?
①「Quality of life(クオリティ オブ ライフ)」の略。
②「生活の質」「生命の質」と訳される。
③生活や人生の満足度に関する指標で、具体的には「身体的・精神的苦痛や困難が
少ないかどうか」「生活で自由や満足感が得られているかどうか」「生活や人生
において自分らしさを実現できているかどうか」「自分自身の納得のゆく生活環
境が提供されているかどうか」「生活や人生で幸福感や生きがいを感じられるか
どうか」といった点に関与する基準である。
④医療においては「治療方法の選択」「コミュニケーション」「医療環境」「ター
ミナルケア」を始めとして、ほぼすべての場面で患者のQOLに配慮した選択が求
められる。
■「ナラティブ」について。
〇「ナラティブ」とは?
①原語は「narrative(ナラティブ)」で「物語ること」「物語」といった意味。
②「自分自身で語られる物語」であることが「story」との違いである。
③医療においては「人間はひとりひとり、自分固有の物語を紡いでいく存在である」
ということを前提として、その物語のかけがえのなさ(=物語る人間のかけがえの
なさ)を理解していく際に用いられる。その中には患者が自分自身の人生の中で紡
いできた「人生観」「価値観」「死生観」といった〈ものの見方や考え方〉や、
「人間関係」「社会関係」「家族関係」「経済状況」といった〈患者の人生を支え
てきた環境〉も含まれる。
④よって「治療方法の選択」「在宅医療の選択」「終末期の人生・医療環境の選択」
などにおいて、医療者には「これまで紡いてきた患者固有の人生の物語を損なうも
のになっていないかどうか」という点に配慮した医療選択が求められる。
■「尊厳」について。
〇「尊厳」とは?
①「尊く厳かなこと」「気高く犯し難いこと」という意味。
②個人にはそれぞれ、その個人がその個人であるというだけで、他者が尊重すべき「価
値」や「重み」が存在する。これはその個人がどのような人間であったとしても、人
間である以上適用されるべき概念で、出自・性格・犯罪者か否か・障害をもっている
か否か等によって左右されてはならない。
③医療においては、あらゆる場面において「患者の尊厳」を重視した医療選択が求めら
れる。その尊厳の根拠として、先ほど述べた「ナラティブ」な生を営んでいることな
どが挙げられる。
④「医師と患者は対等な存在」と言う時、その「対等性」の中には「尊厳」つまり「互
いに尊重すべき価値ある存在であること」が含まれる。よって患者にも尊厳があるの
と同様に、医師・医療者にも尊厳がある。よって医療活動ににおいては医師や医療者
の尊厳も守られなければならない。
⑤医療で最も尊厳が問題となるのは「尊厳死」の場面である。尊厳死とは「患者の尊厳
が守られた死」であり、尊厳の根拠が患者の「ナラティブ」、つまり「人生観」や
「価値観」である以上、「積極的安楽死」「消極的安楽死」「延命措置の果ての死」
のいずれも「尊厳死」となり得る。
■「自己決定権」について。
〇「自己決定権」とは?
①「自分の生き方や生活について、自分自身が主体的に決定を行うことができる権利」
のことを指す。
②医療において、患者の自己決定権の尊重は基本的な医療倫理として規定・重視される。
患者は医療の主体であり、当事者である、という前提で考えれば病気のことは「自分の
こと」である以上、どのような治療を行うか(あるいは行わないか)は「自分のこと」
として決定する権利がある、というのが「患者の自己決定権」の意味するところで
ある。
③ただし患者は「自己決定権」を適切に行使するために必要な医療知識を持たない。そこ
で患者に自己決定権を適切な形で行使してもらうための手段として「インフォームド・
コンセント」が必要となる。よって医師(医療者)は、患者の自己決定権を損なうこと
が無いように、正確でわかりやすいインフォームド・コンセントを心がけるべきである
し、それを可能とするための「医療知識の蓄積」「最新の医療の傾向の把握」「会話能
力の獲得」が求められる。
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