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【用語解説】:「ES細胞」と「クローン胚」と「iPS細胞」と「体性幹細胞」

【用語解説】:「ES細胞」と「クローン胚」と「iPS細胞」と「体性幹細胞」

■「ES細胞」について。

 〇「ES細胞」とは?
  ①正式名は「胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう)」
  ②英語のembryonic stem cellsの頭文字をとっている。
  ③胚盤胞期の胚の一部である内部細胞塊から作成する

 〇「ES細胞」の作成法は?
  ①受精卵を作成し、胚盤胞の段階まで成長させる。
  ②胚盤胞から内部細胞塊を取り出し、バラバラにする。
  ③それを分化・増殖させ、特定の刺激を与えて目的の組織へと変化させる。

 〇「ES細胞」の問題点は?
  ①胚盤胞は「生命の萌芽」であるため、「生命に準ずるものを破壊する」
   ことに対する倫理的な問題が存在する。
  ②日本では体外受精による不妊治療の際に母体に戻されなかった、破棄
   予定の余剰胚のES細胞への利用を認めているが、それでも「母体に戻
   されなかった胚は「生命」ではないのか、という問題は残る。
  ③ES細胞の遺伝子と移植対象となる患者の遺伝子が異なるため、拒絶反応
   による免疫異常や免疫不全が発生する可能性がある。
  ④増殖の際に遺伝子変異が発生し、細胞が「ガン化」する可能性がある。

 〇備考
  ①世界の再生医療研究の主流はES細胞である
  ②ES細胞の再生医療への応用は着々と進んではいるが、依然として実用
   化された技術と言えるレベルには達していない。

■「クローン胚」について。

 〇「クローン胚」とは?
  ①ヒトの「未受精卵(卵子)」の核を除去し、体細胞の核を移植させ、刺激
   を与えることで卵割を進めて作成した胚のこと。

 〇「クローン胚」のメリットは?
  ①患者の体細胞から核を移植して作成したES細胞の場合、遺伝子情報が
   同一なので移植の際の「拒絶反応」を回避できる。

 〇「クローン胚」の問題点は?
  ①クローン胚を着床させると、特定の人物と同じ遺伝情報を持った「クロ
   ーン」が発生する。人間が受精以外の方法で人間を作成してよいか、あ
   るいは人間になり得る胚を作成してよいか、という倫理的な問題がある。
  ②クローン胚も「胚」、すなわち「生命の萌芽」であるため、通常のES細胞
   同様に「生命に準ずるものを破壊する」ことへの倫理的な問題が発生する。
  ③実際にクローン人間が生まれた場合の問題も非常に多くあるが、今回は省略。

 〇備考
  ①現在大半の国で、クローン胚は「作成禁止」もしくは「研究目的のみの作
   成を許可」という状態であり、再生医療への応用可能性は低い。

■「iPS細胞」について。

 〇「iPS細胞」とは?
  ①正式名は「人工多能性幹細胞(じんこうたのうせいかんさいぼう)」
  ②英語のinduced pluripotent stem cellsの頭文字をとっている。
  ③体細胞を初期化して幹細胞化させることによって作成する。

 〇「iPS細胞」の作成法は?
  ①生体から得た細胞を培養する。
  ②ベクター(媒介者=ここではレトロウィルス)を用いて、分化万能性に必要な
   遺伝子を注入する(※現在ではベクターを用いずに作成する方法も確立されて
   いる)。
  ③それを分化・増殖させ、特定の刺激を与えて目的の組織へと変化させる。

 〇「iPS細胞」のメリットは?
  ①胚盤胞を使用しないため「生命の萌芽」に関する倫理的問題を回避できる。
  ②患者の提供した体細胞から作成されたiPS細胞の場合、遺伝子情報が同一な
   ので移植の際の「拒絶反応」を回避できる(※ただし、iPS細胞の作成には
   時間がかかるため、現在では特定の人物の体細胞から作成されたiPS細胞を
   ストックし、それを用いる方向で研究が進んでいるため、「拒絶反応」の問題
   は実状としてはクリアできていないと考えることもできる)。

 〇「iPS細胞」の問題点は?
  ①ES細胞と同様、増殖の際に遺伝子変異が発生し、細胞が「ガン化」する可能性
   がある。
  ②現在、iPS細胞から「精母細胞」「卵母細胞」「胎盤様細胞」の作成が可能
   となっているため、将来的には「同一遺伝子由来のiPS細胞の精子と卵子を
   受精させ、同一遺伝子由来の胎盤でヒトを作成する」という、ある意味「クロ
   ーン胚」以上の倫理的な問題が発生する恐れがある。
  ③先にも述べたが、作成に時間がかかり過ぎる。また現時点でのコストも高額
   あり、現状では一般的な医療としての実用化が難しい。

 〇備考
  ①現在、再生医療研究の中心はあくまでも「ES細胞」であり、「iPS細胞」研
   究は世界で普及していない。日本が「iPS細胞」に固執することで、再生医
   療研究の分野で世界に立ち遅れる、という問題が生じている。
  ②ここから派生して、iPs関連で特許を取得しても、世界がその特許に基づく
   技術を採用しなければ利益が発生しない、という問題があり、それが研究の停
   滞を加速させる、という問題も生じ得る。

■「体性幹細胞」について。

 〇「体性幹細胞」とは?
  ①人間の体内に存在する「幹細胞」のこと。
  ②「MSC(間葉系幹細胞)」が有名で、骨髄、臍帯組織(へその緒)、臍帯血(へそ
    の緒の血)、脂肪組織などから比較的容易に採取できる。
  ③MSCは骨や軟骨、血管、心筋細胞等に分化することが可能である。
  ④他に造血幹細胞、神経幹細胞等があり、これらの細胞を患者から取り出し、増殖さ
   せて再び患者に移植させる等の研究・治療が進んでいる。ある意味現在一番実用性
   の高い「再生医療」である。

 〇「体性幹細胞」のメリットは?
  ①「ES細胞」「クローン胚」「iPS細胞」の抱える倫理的問題を全て回避できる。

 〇「体性幹細胞」の問題点は?
  ①それぞれ由来する臓器や組織への分化能力はあるが、他臓器や他組織への分化能力が
   ほとんどない。よって「体性幹細胞」では治療できない臓器や組織が存在する。
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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