【用語解説】:「一般的な死」と「脳死」
■「一般的な死」について。
〇「一般的な死」とは?
①医師が判定を行う。判定を行えるのは医師だけであると法律で
定められている。医師の発行する「死亡診断書」もしくは「死
体検案書」がなければ(日本では)火葬が行えない(※「死亡
診断書」は歯科医師でも可)。
②判定基準は「自発呼吸の停止(肺)」「心拍の停止(心臓)」
「瞳孔の散大(脳)」の3つである。
■「脳死」について。
〇「脳死」とは?
①移植医療の発達により、臓器提供者(ドナー)の数を増やす、あ
るいは新鮮な臓器を移植希望者(レシピエント)に届けるという
目的の下に新しく設けられた便宜的な死。
②日本では1997年に「臓器移植法」が施行され、脳死が人の死とし
て法的に認められた。
③判定基準は「深昏睡」「瞳孔の散大と固定」「脳幹反射の消失」
「平坦な脳波」「自発呼吸の停止」の5つ。1回目の判定後、これら
5つの要件を6歳以上は6時間後、生後12週以上6歳未満は24時間後に
再度判定し、同じ結果が得られた場合には「脳死」と認められる。
〇「植物状態」と「脳死」の違いとは?
①「植物状態」とは「大脳」のみが機能せず「小脳」および「脳幹」
は機能している状態。意識が復活する可能性がある。
②「脳死」とは「大脳・小脳・脳幹」のすべてが機能しなくなった状
態(これを「全脳死」と呼ぶ)。回復の余地はなく、維持のための
処置を施さなければ呼吸も心臓も停止する。
■「脳死」にまつわる問題について。
〇「脳死成長(長期脳死)」
①脳死になっても、必要な措置を維持できれば成長することは可能。成
長には脳に関与しない領域もあり、その領域に関しては脳死以後も成
長はする。アメリカでは4歳時に脳死と判定された男の子が、その後21
年間「生き続け」、成長したという報告があるし、日本でも同様の例
がある。
〇「ラザロ徴候」
①脳死と判定された患者が医師の前で突然手を上げ、胸の前で手を合わせ
て祈るような動作をし、その後、手を元の位置に戻す、という事例があ
る。各国で多数の例が確認されている。これを単なる「反射」の一種と
みなすか、何らかの「生存」の証拠と見なすか、という問題がある。
〇「脳死」と「臓器移植」
①「脳死」は「臓器移植」を前提とするため、脳死と判定され、適合性が確
認された時点で臓器の摘出が行われる。その際、「ドナーの尊厳を十分に
守る」ことが重視される(つまりドナー〔=遺体〕を〔モノ〕扱いしては
ならない)。またドナーの家族や関係者に対するきめ細やかなケアも必要
である。ドナーと家族・関係者が、最後まで尊厳と絆を保てるような配慮
があってこそ、健全な「脳死臓器移植」が広まる余地が生まれる。
〇「脳死」と「虐待」
①親による虐待によって子どもが脳死状態になった時、親が子どもの臓器提供
を申し出て子どもを「ドナー」とし、それにより虐待の証拠隠滅を図る、と
いうケースが、ごくまれにある。医師はきちんと状況確認を行い、そうした
隠蔽を未然に防止する必要がある。
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