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【小論文解答】:2008年/日本医科大学/医学部/本試験

 ヴィスコンティのとった対策は、ペストの大流行に際して、感染により死者の増加を防ぎ、国民を守ることで国家を維持するという点から考えて極めて妥当であったが、感染者の生命を軽視しているという点で、現在から考えれば問題があった。一方ヒポクラテスの考え方は、感染者の病状の変化を第一に考えており、患者を中心とした対処法を考えようとしている点で妥当だが、感染という現象自体を軽視している点で問題だとも言える。
 交通機関が発達し、人の行き来が激しい現在では、疫病が人に与える影響力は過去と比較にならないほど大きくなっている。治療法の無い疫病の流行は、世界的な規模で多くの死者を生む恐れがある。従って初期の段階ではヴィスコンディの考える「拡大防止のための隔離」が最も有効な手段である。患者の総数を増やさないことが、疫病対策として一番重要だからである。しかし同時に、ヒポクラテスの考えるように、「感染者に対する最大限の努力」も必要である。かけがえの無い命を持つ一人の人間として、感染者を回復させるための治療法の確立を出来るだけ迅速に行うことは、隔離状態から解放し健康な人間として社会に復帰させるという意味で、感染者にとって最も有効かつ必要な手段である。両者の考えは、現在の疫病対策についてそれぞれ有益なヒントを与えている。私たちはそれらを有効に活用し、全ての人々にとって心身両面で最も納得の行く対処を行えるのである。(597字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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