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【小論文解答】:平成21年度/佐賀大学/医学部/推薦/問6

 著者は医師による自殺幇助の合法化に反対する立場から、米国の終末期の医療制度の問題を指摘している。米国の医療システムは手術中心で、継続的なケアや疼痛管理、家族のサポートといった終末期の患者が最も必要なものを提供するシステムにはなっていない。必要なのはケアシステム自体を変更することであり、私たちはシステムの現状に対する無知に由来する医師による自殺幇助への安易な賛成や反対を避け、自分自身を教育し、声をあげて終末期患者の快適さと尊厳を守るための提案を行うべきである、と述べている。
 筆者が取り上げた問題点に対して、私は賛成できる点とそうでない点がある。賛成できるのは終末期医療が患者の尊厳を重視したものでなければならない、という点である。患者は尊厳を持ったナラティブな存在であり、患者の「自分らしい生き方」は終末期においても尊重されなければならない。よって現在の終末期の医療体制がそうした目的に沿わないのであれば、当然それを変えていく必要があるだろう。身体的苦痛や人間関係の喪失、経済的困窮を理由にして患者が医師による自殺幇助を望まなくてもいいように、医療は患者を心身両面から支え、また経済的負担を軽減するための制度を構築する必要がある。
 賛成できないのは、筆者の提案があくまでも長期的な観点からの理想論であり現実を反映したものではない、という点である。システムを再構築するためには時間がかかるが、終末期の患者は今この時にも苦痛と孤独とに苦しみ、自分の生の終え方終について必死に考えている。そして筆者の言う継続的なケアや疼痛管理が十分構築されなくても、終末期の患者は現在の限られた条件の中で「自己決定」を行わなければならない。その「自己決定」の選択肢の1つとして、患者が望むのであれば医師による自殺幇助は当然保証されるべきであると私は考える。それもまた患者の尊厳を守るために必要だと思うからである。(795字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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