【用語解説】:「赤ちゃんポスト」と「内密出産」
■「赤ちゃんポスト」について。
〇「赤ちゃんポスト」とは?
①親が養育不可能な赤ちゃん(主として新生児)を託すシステムおよび施設。
②病院外部で誕生した赤ちゃんを託す。
③日本ではじめて設置されたのは2007年(慈恵病院「こうのとりのゆりかご」)。
④現在日本で設置されている施設は熊本県(慈恵病院「こうのとりのゆりかご」)
と北海道(「Baby Box」)の2箇所。
⑤目的は「子どもの命を守ること」「親(主として母親)の子どもへの犯罪
(主として遺棄・殺人)を防止すること」にある。
⑥2020年3月時点で約150人程度が預けられた。
⑦はじめの頃は幼児(3歳児)等の例もあったが、最近ではほぼ新生児が預けられて
いる。また預け入れのピークは2008年度で25人。最近では年間2~4人程度の預け
入れである。
〇「赤ちゃんポスト」の問題点。
①親が身元を明かさずに立ち去るケースがあり、その場合は子どもの「出自を知る
権利(親が誰かを知る権利)」が侵害される。
②施設は子どもの「命を守る」ことに特化しており、預けられた子どもの未来に
関与はできるが、責任は取れない。預けられた子どもの約半数が養子縁組家庭
または里親家庭で、約2割が乳児院などの施設で養育。2割が実親(赤ちゃんを
預けた親)の引き取りとなっている。
③「赤ちゃんポスト」のシステム、および預けられた子どもの法的な位置づけや
権利保障等を定める法的整備が整わないうちに「見切り発車」で行っているた
めに「法的・倫理的問題」を解消できていない。
④「安易な産み捨てを助長する」との意見があったが、現時点ではそうした傾向は
見られない。
⑤「望まない人工妊娠中絶から子どもを守るために必要」という意見があったが、
現在の日本の人工妊娠中絶数は年間15万件程度(その内「望まない」ケースがど
れだけあるかは不明)であり、この目的に対しては実質的に機能していない。
■「内密出産」について。
〇「内密出産」とは?
①病院以外に身元を明かさずに出産できるシステム。
②出産は病院内で行う。
③現在日本で行っているのは熊本県(慈恵病院)のみ。
④2022年7月時点で合計3例実施。
⑤母親は慈恵病院にマイナンバーカード・運転免許証等のコピーを渡す。
⑥子どもが一定の年齢になれば、(子どもが望めば)母親の情報を提供する(予定)。
この点で「赤ちゃんポスト」とは異なり、子どもは「出自の権利」を行使すること
ができる。
〇「内密出産」の問題点。
①戸籍関連の法整備が不十分な状態で「見切り発車」を行っているため、子どもの
法的身分(誰の子どもなのか?)に関するトラブルが生じる恐れがある。
②「赤ちゃんポスト」同様、システムは子どもの「命を守る」ことに特化しているため、
子どもの未来に関与はできるが、責任は取れない。産まれた子ども(1例目)は養子
縁組を前提に里親家庭に引き取られる予定。
■「赤ちゃんポスト」「内密出産」を認めていくべきか?
〇基本的立場
①子どもの命や(生きられるという意味での)幸福・権利を守るためには必要なシステム
である。
〇問題点の解消
①出産間際(もしくは出産後)まで「誰にも相談できない」という問題を解消すべきで
ある。「赤ちゃんポスト」や「内密出産」は〈最終手段〉であり、それ以前に妊娠・
出産で問題や悩みを抱えている親が安心して相談でき、対処できるようなシステムや
施設を設けていくべきである。
②いずれも法が未整備の状態での「見切り発車」となっているため、生まれた子どもの
法的地位や権利に関する法整備を進めていくべきである。
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