国際医療福祉大学医学部では、これまで計5回小論文が出題されている。2018年から2020年までは「少子化・晩婚化と女性の社会進出」「少子高齢化と移民問題」「OECD調査結果における子どもの読解力の低下」といった、どちらかと言えば文系寄りの問題が出題された。これには医学部創設時の教授陣の問題が関係していたと思われる。
創設時の文系科目担当の教授・准教授の多くが〈新聞社・メディア関係からの天下り〉、つまり元新聞記者や報道関係者だったこともあり、当初は彼らが小論文の問題作成を行っていたと考えられる。彼らは「医系小論文」が生徒の〈医療に関する資質〉を諮問するためのものであることを理解せず、いわゆる通常の「小論文」として問題を作成していたように見える。
もちろん表向きは「少子化」「少子高齢化」とは銘打っているものの、内実は「ジェンダー論」「在邦(日本居住)外国人論」の方にあり、出題者の期待は〈時事的問題への問題意識の有無や社会学的価値観に基づくリベラルな思考の確認〉の方にあったと思われる。しかし他の大学の医学部の小論文と比較してもこうした出題傾向は異質であり、また「医系小論文」の目的から逸脱していたように見えた。
このような状況に対して何らかの異論が出たのかどうかはわからないが、2021年は「日本におけるコロナウィルスに対する取り組みの良い点・悪い点」、2022年は「医療におけるAIの役割」といった、比較的他の大学の出題傾向に準ずるテーマが出されるようになった。おそらく問題作成者の変更があったか、何らかの〈指導〉があったものと思われる。
こうした点を踏まえて考えれば、国際医療福祉大学の医学部では、これからしばらく〈時事的「医療」問題に関する知識や関心、医療人としての妥当な発想〉を確認するための出題がなされる可能性が高くなると思われる。また昨今の〈海外の混乱状況〉と〈国際医療福祉〉という大学の理念を重ね合わせて考えれば「医療困難地域における医療の在り方や関心・未来の医師としての意欲」などに関する出題も大いにありうる。
受験予定者、特に本命の受験予定者はできるだけ時事的問題に関心を持ち、データの収集を行い、それらを医療人としての自分の在り方と結び付けて、意見形成を行っておくのが望ましいと私は思う。
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