課題文にもあるように、医療人はこれまで自らを倫理的に律し、人々の生命や健康という利益を追求するよう努めてきた。同時に法の側も、そうした医療人のあり方を支援するような形で法整備を行ってきた。しかし最近になって、この医療と法との協調関係が崩れつつある。その理由は二つ考えられる。ひとつは様々な医療ミスによって、医療人の倫理意識が低下したと考えられるようになったということである。そしてもうひとつは、クローンや代理母、脳死といった医療技術の急速な発達により、倫理的判断が確定しないまま治療が行われるケースが発生したということである。これらの理由によって、法は医療人を支えることを止め、法的倫理に則して医療人を裁くようになったのだと私は考える。
だが私は、医療人はこれからも自らの力で自らを律して行くべきだと考える。医療人は自分の仕事が生命や健康といった重要なものに関わっていることをこれまで以上に自覚し、倫理的に問題がある医療行為があった場合は法に先立って徹底的に検討した上で、規制すべきは規制してゆかなければならない。また医療としては妥当な行為であっても法の側の知識不足ために犯罪行為と断定されることもある。医療人は医療の現状を積極的に情報開示してそのような事態を避けるとともに、自らも厳しい基準を設けてゆく必要がある。それが社会から信頼をえた上で倫理的な自負を保つ唯一の方法である、と私は結論付ける。(597字)
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