1次試験で課される。以前は50分で要約200字プラス意見論述600字の計800字という過酷な問題であったが、2019年からは意見論述のみで800字と、若干負荷が軽減されている。また課題文の内容も、ここ2~3年は難度が若干下がって書きやすくなっているという印象である。
2013年度以前は30分400字で易しいテーマ型の出題であったが、2013年度から突如難解な長文課題文型へと変更し、時間も50分に拡大して難度の高い課題を出題するようになった。もともとこの大学は他の私立大医学部を受ける際の「滑り止めに近い併願校」として、多浪生に重宝されてきた大学であった。小論文に関しても特に得点化はされておらず「普通の人間」であることの確認程度の意味しかなかったように思う。 よって出題テーマも「地球温暖化」「少子高齢化」「医療人の資質とは?」といった基本的なもので、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とはどういうことか?といった出題もあった(ちなみにこれは医療ミスやヒヤリ・ハット事例に関する記述が可能な「医系小論文」として成立する)。
川崎医科大学が突如小論文(および面接)のレベルを上げた背景としては「医療人としての高い人間性を持つ人材が欲しい」という思いがあったと考えられる。当時(付属高校出身の医学部生が)卒業して医局で働くようになった時、その態度があまりにも悪く患者から色々クレームがあったということを「とある筋」から聞いていたが、これが原因であろうと思われる。外部から学力・人間性ともに優秀な生徒を入れなければ地域からの信頼は得られない、と考えたのではないだろうか。そうした改変の効果があったかどうかは定かではないが、以前よりは学生の質は上がったのではないかと思われる(それでも比較的「合格しやすい」大学の1つであることに変わりはないが)。
小論文の傾向としては、まず「読解重視型」であることに注目したい。簡単に言えば「読めなければ解けない」という形になっている。読解力の弱い生徒にとってはこれが「学科は比較的取り組みやすくてもできれば受験を避けたい」理由の一つとなるだろう。上にも述べたが、課題文の難度自体はここ数年易化しつつある。しかしそれでも読みにくいことに変わりはない。したがってまずやるべきことは「過去問の課題文の読解」によって長文に慣れることだと思われる。もちろん、赤本に掲載されているサンプル数では足りないので、同傾向の長文を課す大学として「獨協医科大学」「北里大学」等の過去問の課題文に触れ、難しい言葉に対する「耐性」を手に入れることが重要である。その際、分からない言葉は「辞書やインターネットで調べる」等の作業を面倒臭がらずにやるとよい。
次に必要なのは「とにかく800字の論文を書き切る」ことだと私は思う。しかもなるだけ「論理的」に。高校や予備校によっては「8割ルール」と称し、800字以内の論文であれば640字以上書けば大丈夫であるかのように教えているところもあるが、推奨は「9割5分」、つまり760字以上である。川崎医科大学の受験生の半数程度は小論文対策の経験が不足しているため、字数や論理性に関して「不足」が生じている。2次試験の際にアピールできる小論文の条件として、まずは「字数の確保」を目指したい。〈字数は規定字数に近いほど印象が良くなる〉という前提でギリギリまでマスを埋める習性を身につける。その上で、課題文型であれば「筆者の主張とその根拠」「それに対する自分の意見」「その意見の根拠」「具体例」「結論・展望」がきちんと並べられた論文を書くことができれば、相応の評価が与えられると思う。その際、多少論理がずれていても構わない。〈論理的に書こうとした努力が評価につながる〉と理解する。最初は非常に苦しむと思われるが、要は「慣れ」である。立派な論文を書く必要はない。「書き切る」ことに集中する。
最後に必要なのは「医療に関するテーマ・時事問題」について日頃から関心を持つ、ということである。ここ数年の課題文はいずれも「医療全般に関する興味関心の有無」が記述のカギを握るようなテーマとなっている。医師と患者の関係、コミュニケーション、信頼関係、AIや工学との共存、高齢化の現状、尊厳・・・。そうした医療を取り巻く現状について関心があり、語る言葉があるということが、そのまま〈医療人としての資質がある〉ということを意味している。少なくとも面接官はそう考える。だから1次試験の小論文を「2次試験の合格判定に使用」するのである。〈2次試験で面接官から小論文のことを聞かれてもきちんと答えられる〉かどうかを視野に入れて、新聞等の医療記事や「医学部小論文重要テーマ集」などに目を通しておくと良いと思われる。
コメント