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【小論文解答】:科学の「わかる」と日常生活の「わかる」(2015年/岩手医科大学/医学部/本試験)

 筆者は科学でいう「わかる」と日常使う「わかる」という言葉にはずれがあり、人間に関わる研究の場合にはこのずれに気をつけることが大事であると述べているが、私も筆者の意見に賛成である。本文にもあるように、科学の世界では何らかの事実や因果関係の判明を以て「わかる」とすることが多いと思われる。例えば医療行為においても、患者の症状を分析して事実や原因が判明したことを「わかる」とする。病気の判定、原因の特定、薬の効果、という科学的なレベルの「わかる」は患者を治療するためには欠かせない。その意味で科学的な「わかる」相応に重要な意味を持っていることは疑いようがない。
 しかし日常使う「わかる」の方が科学の「わかる」よりも深くて重い、と私は思う。本文の例で考えると、あるがん遺伝子を持たずに乳癌を発症した患者にとって、10%という事実は無意味である。またあるがん遺伝子が原因で発症した患者にとっても、それで自分がどうなるのか、どうすべきかがわからなければ同じくその事実は意味がない。日常生活の「わかる」は自分の固有な人生に直結する形で何かが与えられる、という事であって、何が事実かという事だけでは不十分なのである。そのことを理解せずに患者に客観的な事実だけを羅列しても、患者の主観としての心には響かない。科学で得た客観的知識を主観的で固有な人生に結びつける想像力と工夫が医師にも求められているのだ、と私は考える。(595字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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