わが国の超高齢化社会の医療は、病気を抱えながら生活する高齢者の健康面のサポートとともに、納得のゆく人生の終末期のサポートが非常に重要になってくると私は考える。現在、健康寿命と平均寿命の差は10年ほどあり、高齢者は疾病と体力の低下によりQOLの低下した状態で生活を送らなければならない状態にある。高齢であれば何らかの疾病を抱えて生きることは仕方がないが、それでも最後まで充実した人生を送るためには病状悪化の防止、体力の維持といった対策により健康寿命を延ばすことが非常に重要となってくる。そのためには医療の側からのきめ細やかな観察と助言、治療活動が必要であると同時に、Pt・Otといった人々と連携し、「一病息災」「多病息災」といった形で高齢者がある程度元気で暮らせるような仕組みを作り、積極的に支えていくことが大切であると考える。
また後期高齢者の増加とともに「人生の終わり方」に関する考え方も大きく変化している。自分の人生をどう終えるかという問題は「個人の尊厳」の問題であり、その自己決定は可能な限り尊重されるべきである。住み慣れた自分の家に戻り家族や近所の知人友人と関わりつつ最期を迎えたいという人も多いだろう。それを実現するためには患者の体力の維持、定期的な往診、オンライン診療も含めた密な健康確認、緊急時の迅速な対応など、医療の側からの様々なサポートが必要となってくる。さらに患者の家族、介護・福祉関係者、自治体、地域住民との連携による包括的なケアシステムを形成することが重要となる。医師はそうしたサポートチームのリーダーとして率先して貢献することが求められる。
地域を支える医師一人一人が「患者の人生を支える」ものとして医療を考え、それを実践していくことで超高齢化社会の医療は前向きで豊かなものとなっていくと私は考える。そうした医療の当事者として、私も高い自覚を持って貢献していきたいと思う。(792字)
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