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【小論文解答】:平成26年度/佐賀大学/医学部/推薦/問3

 著者は小児科医に対して、子どもを亡くした両親の悲しみからの回復の期間を決めないこと、また回復を促すために「悲しみを乗り越え、自分の人生を生きよ」といった言葉をかけプレッシャーを与えないこと、そして長期にわたる悲しみのプロセスに最善の支援を提供する自助支援グループの存在とその機能について学んだ上で、子どもを亡くした両親にそうした自助支援グループの親たちを紹介することが必要である、と訴えている。
 この訴えに対して、私はおおむね賛同すると同時に、小児科医にできることは他にもあるのではないか、という考えを持つ。著者の述べているように、子どもを亡くした親はその喪失を深く長く悲しむ。しかもその悲しみ方は親それぞれであり、回復の仕方も一様ではない。それでも同じ境遇の人々の中で自らの悲しみを表現して分かち合うことは、回復のために大きな効果を持つ。その意味で喪失を乗り越える方法として、自助支援グループの親たちを紹介することは、小児科医にとって必要なグリーフケアであると私は思う。
 一方で、両親の悲しみは、子どもを失うまでにその子どもとどのように関わることができたかによって大きく変わるものである、と私は考える。医療が治療や回復に専念し、「親と子の関わり」という重要な要素を考慮に入れなければ、あれもしてやれなかった、これもできなかった、という悔いが両親の心を支配し、悲しみは大きく深くなる。たとえ長い時間でなくとも、子どもが亡くなるまでのプロセスで十分な関わり合いを持てたならば、残された両親の悲しみはより和らいだものとなり、解決までの時間も短いだろう。
 このように、グリーフケアは子どもが亡くなる前から始まっているという観点で考えれば、そのプロセスで小児科医が果たすべき役割は大きい。子どもだけでなく、両親の苦しみに寄り添い、軽減する方法を模索し、実行することが小児科医には可能だと私は思う。(789字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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