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【小論文解答】:平成30年度/佐賀大学/医学部/推薦/問3

 筆者の考え方は「たとえ善意であっても自分の考えや価値観を一方的に他者に押し付けてはいけない」とまとめることができる。筆者の長女は、長年子供のように愛情深く世話をしていた犬を亡くして深い悲しみと苦しみの中にいた。筆者は彼女を慰めたいと思ったが、彼女は成人である以上、その慰めはあくまで「彼女の望む方法」でなければならない。助けの申し出は、相手の望みを質問の形で聞くことから始めるべきだと筆者は述べている。
 筆者のこうした考え方は、医療においては「患者の自己決定権の尊重」を実現する際の基本的な指針として活かせる、と私は考える。医師の目的は患者の治療・回復を通して患者の人生に貢献することにあるが、それが時には「医学的見地から最善と思われる治療法の提案の押し付け」につながることがある。そしてそうした提案をなかなか受け入れようとしない患者を「自己の健康に対して不真面目な存在」と見なすこともありうるだろう。
 しかし医療の主体はあくまでも患者であり、その幸福感や人生観といったQOLの基準はひとりひとり異なっている。本文に「自分の人生に対する彼らの権威を尊重せよ」という記述があるが、この「権威」とはおそらく「自己決定権の所有」ということを意味すると私は考える。医療においても「自分にとって何が最善の治療であるか」を決めるのは患者本人であるべきで、医師はその決定をどう医学的に実現するかを考え、支える必要がある。
 もちろん、患者は自己の身体や精神に関する正確な現状把握や、治療法に関する正確な知識を持たなければ、適切な自己決定を行うことはできない。患者の自己決定に必要な情報提供は医師の必須事項となる。その上で、「あなたは何を望むか?」「私にどうして欲しいか?」という形で患者の希望を確認し、患者の価値観や人生観に合わせて医療的な「最適解」を患者と一緒に模索していく。私はそのことの大切さを筆者の文で再確認できた。(795字)

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玄武庵

Author:玄武庵
2014年6月から医系小論文専門の個人ブログとして年間50記事~60記事を掲載。年間ページビュー数約21万、表示回数約90万、主要検索エンジン検索10年連続1位(医学部/小論文/解答)。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツは基本的に無料です。また解答の著作権はすべて「医学部小論文過去問自作解答集」に帰属します。)

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