筆者の主張に対して賛成するのは、男性の育児休暇を義務化するとともに、育児に必要な知識と経験を男性が事前に習得しておくべきだ、という点に対してである。仕事をして収入を得るのは人間の「社会的自立」のための重要な要件である。これは男性・女性に関係なく平等に実現されなければならない。一方日本では「仕事は主として男性、家事や子育ては主として女性」という役割分担をよしとする慣行があり、この慣行は女性の社会進出が実現しつつある現在でも影響を与え続けている。しかし「社会的自立」に関する男女の平等が認められる以上、「家事や育児」の負担の平等は当然保証されなければならない。男性の育児休暇を義務化し、家事や育児に対する知識や経験を男性が習得することで、女性だけが負担を負いがちな状況を改善していく必要があることは言うまでもない。
次に反対するのは、筆者が家事や育児の負担という問題をどのように解決するのかという点について明確な提案を行えていない、という点に対してである。筆者は育児休暇や労働時間の短縮が男性の家事や育児の参加につながらないと述べ、さらにフランスでは出産休暇はあっても育児休暇はない、という事実を提示するのみで、具体的な提案がなされているわけではない。男女共に家事育児に参加するということは、「仕事と家庭の両立」という問題が女性だけでなく「男性」の問題にもなる、ということを意味する。そうした点を踏まえた上で「休暇」という制度にこだわらずより多様な可能性を探る必要がある。
これから重視されるべきは、育児と仕事の両立を促進するような施設や制度の拡充であると私は考える。例えば託児所の数を増やし、仕事をしながらすぐに子どもを迎えに行けるようにしたり、休暇後の安定的な職場復帰を保障するための法整備を行ったり、リモートワークを拡充し家庭で仕事ができるようにしたり、といった工夫が大事だと私は思う。(792字)
- 関連記事
-
コメント