知的障害や認知症といった問題を抱えている人がマスクの着用・手洗いの励行・ソーシャルディスタンスといった「新しい生活様式」を受け入れることができないのは、コロナウィルスの危険性を認識できない、「新しい生活様式」の意味を理解できないもしくは忘却している、といったことが原因であると思われる。しかし彼らが「新しい生活様式」を受け入れられずに以前同様の生活行動を継続する場合、彼らが感染することで身体に重篤な影響を被ったり、場合によっては亡くなったりするだけではなく、他者へのコロナ感染をもたらす恐れもある。こうしたリスクを排除したいという思いは、「新しい生活様式」を守っている人々にとっては切実であろう。そのためこうした「新しい生活様式」を受け入れにくい人々の外出を制限するなどの極端な対策を望む、といった考えも生じやすい。
しかし彼らも人間としては「対等」であり、一般の人と同様の尊厳を持つ以上、彼らを社会から除外するような対策を考えることは妥当ではない。リスクに対する認識が違っていても、いかに彼らと「共存」していくか、という観点から対策を考えなければならない。具体的にはまず「一般の人」が彼らにコロナウィルスを感染させないように「新しい生活様式」をきちんと守ることが何よりも大事である。「新しい生活様式」を守ることで彼らのコロナ感染を防止することができれば、彼らに対して想定されるコロナに感染するリスクや他者にコロナを感染させるリスクを軽減できる。また現在公共交通機関や市街などで行われている注意喚起のポスター掲示や音声案内を、彼らにより理解しやすい形へと変更し、自発的に「新しい生活様式」を実践できる機会を拡大していくことも必要な工夫である。さらに彼らの利用する障害者施設や高齢者施設においても「新しい生活様式」に対する理解を得られるようなアドバイスや説明を継続していく、といった対処が重要である。
一方で、できるだけ彼らの外出によるコロナ感染リスクを抑制するような方策も考える必要がある。例えばコロナ感染者が来訪しやすい病院などでは、知的障害者や認知症の方の感染リスクを減らすために「リモートでの診断やアドバイス」「かかりつけ医による定期的なオンライン診療」「往診の強化」「リモート診断での処方箋の有効化」などを行っていく必要があるだろう。また買い物などの日常生活においても、行政などの支援によって代行システムを確立し、彼ら自身が人混みに入って行かずに済む方法を考えることも重要である。さらに「新しい生活様式」への受け入れの困難さを軽減できるようなマスクの開発、消毒方法の工夫も可能であれば模索していく必要がある。こういった様々な感染対策を講じることで、コロナ状況下における「共存」は可能になると私は考える。コロナ終息の見通しがきかない現在だからこそ、共に生きられるような発想と工夫が大切だと思う。(1193字)
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