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【医療時事問題解説】:子宮移植について(2021/7/25執筆)

【子宮移植について】

1:「子宮移植」とは?
■妊娠・出産を希望する「子宮がない」女性に対して、〈自分の子どもを、自分のお腹(子宮)で育て、自分で出産する〉形で実子を手に入れることを可能にするための移植。他人の子宮を(生体もしくは脳死者等から)移植する(予定)。出産は帝王切開となり、子どもを産み終えたら子宮は摘出。将来は子宮筋腫などで子宮を失った人も対象とする予定。

2:具体的には?
■慶応大学では2016年から、生まれつき子宮のない「ロキタンスキー症候群」の患者に対して子宮移植を計画しており、2021年7月に日本医学会がこの臨床研究を容認する報告書をまとめた。これを踏まえて、慶応大学では学内の倫理委員会に研究計画書を提出する準備をすすめている。
■現時点での提供者は「母」「姉妹」といった親族を予定。〈本人が/自発的に/無償で〉提供することが前提
■さまざまな困難が予想され、現時点では実現の見通しは立っていない。

3:メリットは?
子宮を持たない女性が「実子」を手に入れることのできる唯一の方法である。
■「代理母(代理出産)」で生まれた子どもは民法上「実子」と認められない(出産した女性が母親)ので、親子関係およびそれに伴う財産分与等の問題が発生するが、子宮移植の場合は〈出産した女性=遺伝上の母親〉となるので、そうした法律関係の問題が生じない

4:問題点(物理的・経済的)は?
■ドナーからの子宮摘出手術は8時間半程度。ドナーの身体的負担が発生する。
移植を受けた人(レシピエント)は拒絶反応防止のための免疫抑制剤を使い続ける必要がある。レシピエント自身および生まれてくる胎児に影響が出る恐れがある
■移植から出産まで1件あたり2000万以上の費用がかかる。

5:問題点(倫理的)は?
■移植は通常、移植しなければ本人が深刻な身体的問題を抱える場合に行われるものであるが、今回は移植をしなくても本人が深刻な身体的問題(例えば身体的欠損や臓器機能の悪化等)を抱えることのない人を対象として移植を行うことになる。脳死臓器移植が「子宮」を提供の対象としなかった理由もここにある
■移植を行わなくても一応「健康」である人の「価値観」のために、(今回は)健康な人の身体に侵襲(メスを使って身体を傷付けること)を加えて不健康にすることが、「医療行為」として妥当なのか、という問題が発生する。これは「脳死臓器移植」であっても同様で、誰かの「価値観」のためにドナーの臓器の移植を認めるべきかという問題が生じる(死んでいるのだからいいじゃないか、という発想はドナーの尊厳を侵害する)。
■同じことであるが、「子ども」を得るには「養子を迎える」というやり方もある。あくまで「自分の子どもを、自分のお腹で育て、自分で産む」という価値観に医療が奉仕すべきであるか、ということが論点となる。

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玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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