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【小論文解答】:2019年/日本医科大学/医学部/2月7日分

 生活の質と命のバランスは、自分の人生についての各個人の価値観によってその都度決定される。今回の「顔面移植」を受けた女性の場合、術前の欠損部が大きかったことが自身の尊厳を大きく傷付け生活の質を下げるという判断から彼女は「顔面移植」を選択し、その代償として免疫抑制剤の継続的服用および発ガンのリスクを受け入れたのだと思われる。結果として女性は12年後に亡くなったのだが、顔面移植術後の彼女の写真を見ると彼女は彼女なりに納得して自分の人生を過ごしたのではないかという気がする。移植を行わず傷ついた顔で生き続けるよりも、移植によって顔面を手に入れ綺麗な顔で生きられる方が、彼女にとって生きる意味や人生の価値があった。つまり今回のケースでは、彼女は彼女自身の価値観に基づいて生活の質と命の最良のバランスを保ったのだと考える。
 医師にできることは、まず生活の質と命のバランスが問題となるような場面において、各選択のメリットやデメリットに関する適切な情報を提供し、患者の選択の手助けを行うことである。そしてさらに大事なことば、こうした困難な選択を少しでも軽減できるように医療技術を向上させることであると私は考える。例えば免疫抑制剤を改良することで発ガンのリスクを減らしたり、顔面が回復可能なレベルまで再生医療を進歩させたりして、生活の質の命のバランスではなく「両立」を目指すことが重要なのだと私は考える。(593字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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