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【小論文解答】:2013年/川崎医科大学/医学部/本試験

 ほんの短いひとつの言葉が相手に時間軸を意識させ、自分という大きな物語の通過点として現在を位置づけることで救いや癒しをもたらす、という筆者の意見に、私も大いに賛同する。そしてその短い言葉が、傷つきから癒しへといたる物語の存在を「垣間見せる」という意味において、言葉を投げかける側だけでなく、言葉を受け取る側との共同作業において成り立っている救いや癒しの難しさやはかなさというものを、私は強く感じる。
 医療においても、治るか治らないかの瀬戸際で困難な治療に長期間挑んでいる患者がいる。またはもはや治る見込みがないことが確定し絶望に沈んでいる患者もいる。これは、現在の自分が過去から続く自己の物語から切り離され未来を失った、ということを意味する。彼らに対する医師や身の回りの人々の一言が、彼らを再び自己の人生の主役へと引き戻し、未来を肯定できるようにすることができる、というのであれば、医療人として患者に投げ掛ける言葉の一つ一つが、非常な重みを持っていることを自覚しなければならない。
 そして医療人は、患者が少しでも自分の人生を肯定し、前向きに生きてもらえるための言葉を適切に投げ掛けるために、患者を常に「語られるべき物語」を持った固有の存在として捉え、彼らの人生そのものに向かって響くような言葉を誠意を持って捜し続ける必要がある。そのためにはまず医療人自身が自分の「物語」を磨くことが大切なのだと思う。 (594字)



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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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