「不言実行」は人間のあり方としては好ましい面もあるが、社会における現実の行動のあり方としては問題も発生する、と私は考える。まず「不言実行」とは「あれこれ言わず信じるところを黙って実行する」という意味だが、自分の行いを他人に対して見せびらかすことをせずコツコツ行うありさまは、その人の「慎ましさ・誠実さ・信念の強さ」などを感じさせるものであり、非常に好ましい印象を他者に与える。私は受験生として日々勉強をしているが、自分も含めて多くの人が「無言不実行・有言不実行」になりがちである。その中で黙々と課題をこなす友人もいて、私もそういう人間になりたいといつも思う。
しかし例えば自分が将来関わる医療の世界において、「不言実行」は好ましい資質とはならないと考える。患者を治療する場合や他の医療従事者とチーム医療を行う場合、それらを円滑かつ有効に行うためには「コミュニケーション」が前提となる。そこでは自分が何を考えているのか、何をしようとしているのかを、患者や他の医療従事者に対して明確に伝達し、さらに相手の価値観や意向なども踏まえて、最終的な治療や行動の内容を確定しなければならない。つまり医療における「実行」は「不言」によっては成り立たないのである。「不言実行」の医師は、たとえどれほど自分の職責を誠実に果たしていたとしても患者や他の医療従事者からの信頼は得られなないし、有効な治療活動を行えないと思う。
こうしたことは医療に限らず、社会活動全般に関して言えることだろう。他者と社会活動を営む際には、常に「説明と同意」が前提である。そして自分の発言したことに責任を持ち、自分だけの力ではなく他者の力も借りながら物事を実現していくことが「社会の役に立つ」ということの中身である。したがってこれから社会に出ていく私に必要なのは「コミュニケーション能力」と「有言実行力」だと私は思う。この2つの力を磨いて、社会の役に立てる人間になりたい。(808字)
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