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【小論文解答】:2020年/北里大学/医学部/2月1日分

〔問1〕(※解答例)
未来の目的によって強く拘束された時間(18字)

〔問2〕
 社会全体が目に見える価値、すなわち地位や名誉・権力・金銭・知識といった価値に重きを置くようになり、それらを多く手に入れた者を「成功者」と見なす価値観を人々が持つ中で、未来の成功を実現させるために必要な作業や行動をすべき時間として「現在」を捉え、未来の成功を確実なものにするために「現在」をいかに効率的・合理的に用いることができるかということだけを人々が重視するようになってきたからだと私は考える。(198字)

〔問3〕
 筆者は課題文の中で「生老病死はヒトの自然」であるとし、これが「ああすれば、こうなる」の範囲には根本的には入らないと述べているが、これは「なにが起こるか分からない」という「本来の未来」の価値を重視するあまり、生を「目的的な未来」から切り離された「現在」の刹那的な充実のみに置こうとする意見であり、この点に関して筆者は批判されうると私は考える。確かに未来の目的のための手段としてしか現在を考えることのできない人生は虚しいものであるが、一方で自己の人生や健康の持続に関して安心できる一定の目安が得られなければ、「ああすれば、こうなる」の拘束から解かれた現在を充実させることも出来ないはずである。生老病死に関する「目的的な未来」なしにただ「現在」を充実させようとすることの方が、むしろ生のあり方としては虚しいのではないかと思う。
 医療とは基本的に「ああすれば、こうなる」の積み重ねによって成り立っている。暴飲暴食を続ければメタボリックシンドロームや糖尿病になり、飲酒は肝臓を、喫煙は肺を悪くさせることは明確な因果関係によって捉えられる。未来にそうならないように、現在何を行うべきなのか、事前にどういう治療を行うべきなのかを決め、「健康な身体」という未来の成功を確実にするために現在を合理的・効率的に用いる。それは充実した現在、充実した人生を強く支えるものではあっても決してそれらを損なうものではない。「備えあれば憂いなし」という言葉の通り、「目的的な未来のための現在」が存在しなければ、多様な価値観に基づいて営まれる多様な人生を楽しむことも、なにが起こるか分からない未来を享受することも出来ないのである。医師が患者の検査に没頭するのは「すべてが現在化したから」ではなく、むしろ「患者の百年」を思ってのことである、ということを、筆者は理解しなければならないし、医師を目指す私もまた自覚しなければならないと私は考える。(796字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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