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【小論文解答】:2006年/産業医科大学/医学部/本試験

 著者の研究者としての姿勢の中で非常に心打たれたのは、まず彼の謙虚さであった。自分をサラリーマン技術者と呼び、すぐれた頭脳や専門知識も持たないと言い切っているのは決して謙遜ではなく、自分で本当にそう思っているのだと思われる。偏見や高慢さを持たない彼だからこそ、運命の女神が彼に大きな発見の機会を与えたのではないかと私は思う。そして彼は目の前に起こった現象を虚心に眺め、与えられた発見の機会を十分に生かし切り、「質量分析」の分野が大きく発展するきっかけを掴んだのである。その意味で、彼が発見の機会を得たのは偶然であるが、彼が発見したのは必然だったのだと私は考える。
 また同じく、社会に貢献することを重視する彼の精神にも私は心打たれた。自分の受賞に違和感を持っていた筆者は、自己の受賞を納得する理由として「世界の人々に広く役に立つ技術が生まれている」ことを挙げているが、これは社会に役立つ発見を行った自分が受賞に値する人間だといっているわけではなく、発見そのものの重要性に対して賞が与えられたのだと著者が考えているのだ、と私には思える。そして私には逆に、他者の幸福を素直に喜べる人間だからこそ、彼は賞をもらうに値する人間であったのだと考える。
 謙虚さと社会貢献の精神を持って生きるという筆者の姿勢は、将来医師となり、医療を通して社会に貢献することを求められる自分自身にも必要なものである、と私は感じた。(595字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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