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【小論文解答】:2020年/愛知医科大学/医学部/1月31日分

 若手の俳優を育成するために生きたニワトリの首を切らせる、という脚本家の意図を推察するならば、この行為は残虐であるようだが一理ある、と私は考える。実際俳優の仕事は「演じる」ことにあり、その際には役柄の状況を正しく理解し、あたかも本人であるかのように振る舞うことが求められる。しかしニワトリの首を切ったことのない私がどれだけ感情移入をしても実際にニワトリの首を切っている人の気持ちは理解できないだろう。実際に首を切ってこそ理解できる当事者の思いは必ずあり、それを理解して行う演技はただの想像力に基づく演技よりも迫真的となり、それが俳優としての成長につながるのだ。
 しかし、そのために一回一回ニワトリの命を犠牲にする、というやり方はやはり合理的ではないと私は考える。そういった方法でなくても、実際にそうした仕事を行っている人から直接話を聞いてみるとか、現場に行って切る様子やその際の切る人の表情とかを見ることで、ある程度当事者の振る舞いの理由や気持ちは汲み取ることができるはずである。必要なのはそのようなやり方で演技の芯を掴む能力であって、そうした能力の高い俳優こそが本当の意味で「いい俳優」になれるのではないかと私は思う。対象をつぶさに観察し、必要であればきちんと調査しコミュニケーションを行う。そうした「姿勢」を持ち続けることの大切さを教えることこそ、より適切な育成方法なのではないか、と私は考える。(597字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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