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【小論文解答】:2020年/久留米大学/医学部/後期

 終末期医療において重要となるのは「最後まで患者本人の納得のゆく人生を送れるように支えていくこと」である。終末期の患者は「健康を取り戻す」という希望を失い、肉体的な衰弱、身体の痛み、精神的苦痛、死の恐怖などの様々なマイナス要因を抱えて残りの人生を過ごすことになる。その中で、患者が少しでも「この人生でよかった」と思えるようなサポートを、医療関係者のみならずコ・メディカルの方々とも協力しながら行っていかなければならない。とりわけ医師は、これまでの「治療・回復」をゴールとする医療だけでなく、「終末期医療」も重要な医療行為の一つという自覚を持って、サポートリーダーとして自分のできることは何なのかということを考えていく必要があると私は思う。
 終末期の患者のQOLを向上させるために医師にできることは、まず何よりも「ペインコントロール」による苦痛の軽減である。生きることを苦痛に感じる大きな要因は肉体の苦痛から逃れられないことにある。これを軽減し、現在および残りの人生を前向きに過ごせるようなサポートが必須となる。加えて患者の言葉に耳を傾け、共感しながら言葉をかけていくことも重要となる。患者が在宅でのケアを望むのであれば、それを可能にするためのリハビリ、そして自宅と医療機関とのネットワークによるきめ細やかなサポートも必要となる。「何かあったら医師が相談に乗ってくれる。場合によっては来てくれる」という安心感は、患者のみならず患者の家族にとっても在宅ターミナルケアの大きな支えになる。
 誰の人生も一度きりであり、そのかけがえのなさは当人にとっては何物にも代えがたい。医師は患者がそうした存在であることを十分に理解して患者と向き合う必要がある。医療知識、技術、コミュニケーション能力、協調性、リーダーシップを磨き上げて、患者に最後まで自分の人生を肯定してもらえることが、終末期医療の最終目的であると私は思う。(793字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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