地域医療の特徴は、地域の個々の患者と長期的に向き合い医療活動を通して人生のパートナーのように患者を支えていく点にある。健康診断やプライマリーケア、慢性疾患の継続的治療、病院に来られない人の在宅診療、ターミナルケアに至るまで、地域医療の役割は多岐にわたる。理想的な地域医療の実現のためには、こうした役割に対する医師・医療従事者の責任の自覚だけでなく、コ・メディカルの方々の「協力」が絶対に必要である。
この「協力」には様々な側面が考えられる。例えば地域住民が「予防医学」的な意識を持って生活することも立派な「協力」である。医療セミナー等による医師からの働きかけと、それを受け入れて生活する地域住民との相互関係によって、「地域住民の健康」という地域医療の目標、そして地域の個人の健康で充実した人生が実現できるからである。
さらに地域でターミナルケアを含む在宅医療を行う場合、地域で暮らすさまざまな人々との「連携と協力」が欠かせない。医療従事者、患者の家族、介護関係者、行政の担当者、そして患者の近所の方々が連携し協力しながら一人の患者を在宅で支えていく。こうしたメディカルとコ・メディカルの方々との連携によって、医療を通して地域の一人一人を全人的に支え、充実した人生を送ってもらう。これが私にとっての理想的な地域医療である。
こうした医療を可能にするには、まず医師の側が、地域の人々の生活や人生を思いやる姿勢を持っておくことが重要である。医師は患者の身体と向き合う行為を通して、実は患者の人生と向き合っている。そのことを自覚し、患者及びコ・メディカルの方々と積極的に言葉を交わし、共感し、患者にとって必要な治療と「協力」のプランをイメージするのが医師の仕事である。そうやって医療従事者と患者とコ・メディカルの方々が一体となって健康と人生の質を上げることができれば、それは理想的な地域医療であると私は思う。(794字)
- 関連記事
-
コメント