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【小論文解答】:2017年/東北医科薬科大学/医学部【解説付き】

 医療技術の進歩により人は幸福になったとは言えないと私は考える。医療技術の進歩の恩恵とは一言で言えば「寿命の延長」である。以前は様々な病気や怪我に対する治療法が存在せず、そのため多くの人々が長生きできずにその命を終えなければならなかった。しかし医療技術の進歩はそうした病気や怪我に対する治療を可能にし、これまでならとうの昔に亡くなっていたはずの人々が長生きできるようになった。生き続けられるということ自体は確かに人の幸福なので、その意味では人は幸福になったのだと言えるのである。
しかし人の本当の幸福とは単に長生きできることではなく「最後まで自分らしい人生を送れること」ではないかと私は思う。昨今「平均寿命」と「健康寿命」の差が問題になっているが、両者の間には10年ほどの差があり、その間人は「フレイル」「サルコペニア」「寝たきり」といった状態で過ごさなければならない。さらに身体が衰弱すれば延命のための装置をつながれたまま日々を過ごさなければならない。確かに命は続いているが、それが本人にとって「自分らしい人生」であるとは言えないのではないかと思うのである。
これからの医療は後者の幸福に貢献するものでなければならない。医療技術の進歩をベースにしながら、予防医学」もしくは「リハビリ」的な側面をさらに充実させ、平均寿命と健康寿命の差を縮める努力を行うことが将来の私を含めた医師の課題だと私は考える。(596字)

【解説(解答のポイント)】

1:まず「医療技術の進歩により人は幸福になったか」と設問でわざわざ問うているということは幸福になっていない」という結論を出せ、ということを意味する、ということに気づく。なぜ幸福になっていないのかを考える際には「人間の幸福とは何か」を決めなければならないが話が難しいので「患者の幸福とは何か」という話に置き換えて考える。

2:「病気や怪我が治っただけで患者は幸福になれない」とするならば、患者の幸福は一体何なのか?それを考える時に「QOL」「尊厳」「ナラティブ」といった言葉が思い浮かべば、手がかりが得られる。寿命という「生命の量」ではなく、QOLという「人生の質」が問題になっているのだと考え、そうした観点からのアプローチを試みる。

3:その際「平均寿命」「健康寿命」に関する知識があれば論文が格段に書きやすくなる。現在、「平均寿命」と「健康寿命」の間には
10年ほどの差があり、その間人は「不健康」な状態で生活することを余儀なくされる。体が弱って思い通りに動けない。これまで当たり前のように行っていたことがだんだんできなくなる。それは人にとってつらいことである。そうした状態を「フレイル」「サルコペニア」「寝たきり」といったキーワード(とその意味)を知っていれば、簡潔に説明することができる。また、高齢化の現状を踏まえた現在の政府が「フレイル対策」に力を入れていることも念頭に置くとよい。

4:死ぬまで元気でいられることを「ピンピンコロリ」という。最後まで自分らしく生きられるためには、なるだけ健康な状態で居続けることが非常に重要である。そのために「予防医学」「リハビリ」的なアプローチが、これからの医療に求められることは言うまでもない。もちろんそれはあくまでも「医療技術の進歩」が根底にあってのことである。よって「医療技術の進歩」と「予防医学・リハビリ的アプローチ」の二本立てが、これからの医療で重視すべきことであり、それは将来医師になる自分にとってもそうである、ということを述べて論文を終える。
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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