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【小論文解答】:2019年/北里大学/医学部/2月2日分【解説付き】

【問一】
サイエンスに支えられたアートとしての医学とチーム・ベースド・ラーニング(35字)

【問二】
筆者は「技(アート)」のことを、医学・生理学・解剖学・生化学・看護のサイエンスに支えられつつそれらに還元できない広い意味での「医学」であると考えており、その範囲は臨床医学、基礎医学、予防医学、リハビリテーション医学、看取りの医学へと広がる。そしてそれを習得するためには、医療の各分野を担う人材が学生のころから、将来チームで働くことを念頭に置きながら、それぞれの学部の教育領域を横断した形で共に学び、さらにはリベラルアーツも重視しつつ、専門性の絡み合いを目標とすることで習得できる、と筆者は考えている。(250字)

【問三】
 筆者が述べているように「技(アート)」はサイエンスに支えられている以上、私が医学部に入って最も行いたいし、行わなければならないのは「サイエンス」の学習である。医学に関わる専門的な知識に習熟することで初めて私は「技(アート)」の入り口に立つ。医科学あってこその技であるという自覚を持って、専門的分野の学習を行っていきたい。
また、チーム・ベースド・ラーニングを実現するためには、他者との関係構築におけるコミュニケーションの技術を磨いていきたい。具体的には積極的に部活動やボランティア活動に参加し、そこで「みんなと一緒に何かをやる」という経験を積んでいきたい。
私は高校時代に吹奏楽部でパートリーダーの役を担っていた。驚いたのはパートのメンバーがそれぞれ自分とは異なる価値観を持っていて、最初の頃は全く意見がまとまらなかったことだ。そこで目的をはっきりさせ、相手の言い分に耳を傾け、自分の意見を押し通すのではなくどのような意見なら皆が納得するのか、という観点で話し合いを続けることで、だんだんもめごとが少なくなり、皆が一つにまとまって互いに協力し合うようになった。この経験が私のコミュニケーション能力と自己相対化の能力を大いに鍛えたのだ。
他者の言い分に耳を傾けるという点では「読書」もまたその方法の一つである。この文章にもあるが「リベラルアーツの習得」は他者の多様な意見を自己の中に取り込む作業でもある。物事には色々な見え方があり、人には色々な考え方がある。それらは等しく正しいものであり、その正しいもののぶつかり合いや重ね合わせの中に「最適解」がある。そうした構えを身につけるために私はもっと多くの人々と活動や読書を通して関わっていきたい。そして私なりに「技」という花を咲かせていきたいと思う。(740字)

【解説(解答のポイント)】
【問一】
1:前半のテーマと後半のテーマとを足している。1人の人間としては「学部横断」的な幅広い教養を持つことが求められ、集団活動としては「異なる役割を持つ者同士の協力」が求められる。この二つの要素の重ね合わせが「医療」の質の向上につながると理解する。

【問二】
1:【問一】で押さえたポイントをきちんと文章として並べ直し、「アートの定義」「それを習得するための方法」という形で整理し直してまとめる。

【問三】
1:まず、第2段落(「中略」を除く)にある「医学はサイエンスに支えられたアート」という記述に注目し、その「サイエンス」の習得の重要性に言及する。「医学部に入って何するの?」→「勉強」という定番の記述を行う。

2:次に、第4段落(同上)にある「医学は看護とマージ(融合)する必要があり、単独では使命を果たすことはできない」という記述、さらに第5段落の「チーム・ベースド・ラーニング」という記述に注目し、集団で何かを行う際に必要とされる能力、つまり「コミュニケーション能力」「相手の話に耳を傾ける能力」「自己相対化の能力」「それらを綜合して物事を協力して達成していく能力(リーダーシップ)」等に関する記述を行う。

3:その際に、設問文に「これまでの経験も含めて」という指示があるので、これを踏まえた例を具体的に提示する。部活動や文化祭・体育祭等における「集団による課題実現」、ボランティア活動における「役割分担に基づく課題実現」等の話を、受験生自身が持っている、という前提である。

4:また余裕があれば最終段落の「リベラルアーツの習得」に対する言及を付け加えてもよい。専門書や専門論文だけでなく、ジャンルを超えた様々な本を読む。自分の医師としての人生に関係ないと思われることでも、積極的に興味を持ってやってみる。そうしたアピールも大事だと思う。私は大学時代に「留学生の支援サークル」に入っていたが、そこには多くの「医学部生」も参加していた。日本語を教えるだけでなく、リヤカーを曳いて近所を回り、要らなくなった家電製品や棚などをもらっていた。そこでの交渉の仕方や、人の情けなども、彼らの糧になったのだ、と私は思う。

5:簡単に結論づけると、この【問三】は要するに「医師の資質とは何か」「その資質をあなたは持っているか」ということを書かせる論文である。設問を読んだ時点でそのことに気づくと、後は大分楽になる。
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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