FC2ブログ

【小論文解答】:2019年/昭和大学/医学部/2月2日分【解説付き】

 薬剤耐性を持った細菌・ウィルス・寄生虫の蔓延は薬の効かない致命的な病気の世界的流行という危機をもたらす。場合によっては人類が存亡の危機に陥る可能性も出てくる。さらに人間以外の動物で生じた薬剤耐性のある細菌・ウィルス・寄生虫が人間に感染する能力を身につけることで、人間に甚大な被害を与えたり、逆に人間で生じた耐性菌等が他の動物などに感染し、生態系のバランスを破壊する恐れも出てくる。そのため、薬剤耐性については人と動物等の保健衛生の一体的な推進が非常に重要になってくるのである。
 最も重要なAMR対策は、安易に抗生物質等の薬剤を投与しない、ということであろう。確かに抗生物質等の薬剤は細菌やウィルスに対して絶大な効果を発揮するが、そこで生き残った細菌等は耐性を手に入れるとその薬剤が効かなくなる。よって安易に使用しないことが何よりも大切である。そして用いる場合には用法・用量を守って細菌等を完全に死滅させることが重要である。また家畜等の動物に関しては飼育環境を良好な状態に維持し、抗生物質等の使用を極力控える必要がある。万が一耐性菌等の感染が確認された場合には、外部環境との接触を遮断し、野生動物や人間への感染可能性を絶つことが重要となる。
 日本ではオリンピックを迎え、人の流入や行き来が非常に活発になる。医師はこうした点を十分踏まえ、きちんとした医療上の指針をもって診療にあたる必要があると考える。(595字)

【解説(解答のポイント)】

1:このテーマが取り上げられる背景には、抗生物質の効かない「多剤耐性菌」の院内感染による死者の増加、現在流行中の中華製(?)新型コロナウィルスの蔓延、さらにはオリンピックによる(あるいは外国人観光客の増加による)大量の人の流入・出入りが想定される。また、過去にはSARS(鳥由来のインフルエンザウィルス)、新型インフルエンザウィルス(豚由来のインフルエンザウィルス)が人に感染し、世界中がパンデミック(世界的流行)を恐れ、航空機での移動制限等、厳戒態勢が敷かれたことがあった。

2:一方で、抗生物質等の強力な薬剤はその効果の絶大さから、これまで安易に用いられる傾向があった。現在でも多くの抗生物質等が医療の現場では処方されているし、家畜においては予防的措置として抗生物質を投与することもある。投与自体は「悪」ではないが、抗生物質等の薬剤によって死滅しきれなかった菌やウィルスは、その遺伝情報を速やかに変化させ、耐性菌・新型ウィルスとして生き延びる。それらが何らかのきっかけで強力な感染力と劇症性を手に入れると、人類や生態系に大きなダメージを与える。病気になって病院に行き、抗生物質を処方されても用法や用量を守らなければ、自らが薬剤耐性菌の「生産装置」と化すのだ、という自覚が私たちには少ないので、「ちょっと良くなったからもう薬は飲まなくていい」と自分で判断し、投薬を止めたりする。また医師であってもこの点を重視しない人も、わずかだが存在する。

3:こうした現状を知っていることがまずは重要であるし、知らなくても与えられた課題文の情報から読み取って、何とか自分なりに書くことが求められている。
関連記事

コメント

コメント(0)
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

カテゴリ

FC2カウンター