2005年から受験科目として導入された福岡大学の小論文は、以後、テーマ型、資料分析型、課題文型としばらくの間一貫性なく迷走を続け、また字数も無制限、400字、600字以内、600字前後と一定しなかった。時間は最初は40分であったが、最近では60分が続いている。
福岡大学では一次試験の時に小論文を書かせ、それを二次試験の際に得点として考慮するシステムをとっている。福岡大学の二次試験では小論文と面接(指名制集団面接もしくはディベート)とで50点の得点が与えられる。これまで得点のメインは面接だったが(推定小論文15/50、面接35/50)、最近では小論文の比重が上がった(推定各25/50)ようである。その理由としては「面接が得点を課す受験科目として公平性を担保できていない」ということが考えられる。面接に関しては当初から担当する面接官の〈価値観〉に依存する部分が多く、「原則」として課されている基本的な事項はあるが、各担当者はそれを各々自由に解釈して自分の好きなように面接を行った。よって同じ年度の面接でありながら〈ディベートと挙手制集団面接と指名制集団面接が混在する〉という事態が発生した。こうした一貫性のなさに基づく公平性の欠如を補足的に是正するため、それよりも客観性の高い「小論文」の価値の向上が目指されたのだろうと推測する(いずれ面接の方もシステム変更がなされるだろう)。
内容に関してもここ数年は「医療そのもの」もしくは「医療の関与する社会的事象」をテーマにすることが多くなっており、「医療人の資質を客観的に判断する」という医系小論文の目的に沿った出題となっている。また2021年には出題形式に若干の変更が加えられ、小問数が1から2に変更。総字数も600字から700字に変更となった。
出題意図に関しては、以前は小論文としてよりも「国語」としての意味合いが強かった。受験担当者が明言していたが、以前は小論文の採点基準として重視していたのは「字がきれいなこと」「日本語表現が適切であること」「論文の筋が通っていること」等であった。現在重視されているのは「資質の有無」「論理的思考の有無」、加えて「分析力とそれに基づく推論力」などであると思われる。ただし「字がきれいであること」は現在でも非常に重視されている。
小論文の作成担当者は数年ごとの「持ち回り制」になっていて、内容はすべて「担当者に丸投げ」である(以前受験担当者から直接聞いた)。だからその時の担当者の意向が小論文の型や文字数、試験時間などに反映した。しかしある年に医師国家試験合格率が私立大学最低を記録して以来、優秀な人材を集めるために学科試験のレベルアップおよび小論文・面接の見直しを図りつつある。小論文に関して言えば「医療人の資質を問う」「公平な基準に基づいて得点を付与できる内容にする」という点を重視しつつ、現在の出題傾向を踏襲・向上させていくことになると思われる。
福岡大学を本命視している受験生は、とりあえず赤本に掲載されている分の過去問をきちんと演習した上で、他大学の短文テーマ型もしくは本文1000字程度の小規模課題文型の問題をいくつか演習するとよい。「一次試験」の科目なので準備は早目に行っておくのがよいと思われる。
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