※「情報化と医療」についてはさまざまな観点から論ずることが可能である(例えば「情報管理」「患者の知識(意識)」なども論点に含まれる)。今回は「臨床」「対面診療」という観点からの小論文である。
情報化社会が医療に与えた恩恵とは、医師の技量が高水準化かつ平均化したことである。医療の最新技術や発見に関する情報を全ての医師が同時に共有することによって、患者は地域間の医療格差によって生じる不利益を被ることなく高水準の医療を享受することが可能となった。また電子カルテの共有でより正確できめの細かい診療を行えるようにもなった。一方こうしたデータ重視の医療の弊害には、目の前の患者に対するアプローチ不足やコミュニケーション不足がある。医療には技術で病気を治すという面以外に、共感や寄り添いの中で心を癒すという面もあるが、前者を充実させることを医療と勘違いし、患者から「親しみのない、血が通っていない」と思われる医師も出てくるのではないかと思う。
こうした弊害を減らし、高水準かつ温かみのある医療を提供するためには、一人一人の医師が医療における「臨床・対人・固有性」の重要性を自覚し、患者と向き合う大切さを認識しながらコミュニケーションの時間を確保することが重要だと私は思う。医療技術や情報は直接的な臨床現場での患者とのやり取りを支えるものと考え、情報の記入や提示については医師自身でなく他のスタッフやAIに担当してもらう、という工夫も可能である。またタブレット型のパソコンを用いて、医師と患者が向かい合って話をしながら治療を進める、という工夫も出来る。これらによって情報化社会の弊害を減らせると私は考える。(597字)
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