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【小論文解答】:2018年/愛知医科大学/医学部/2月2日分

 「自分が何かを望めば、それを人から奪うのか…」学生は悩んだ。もちろん学生は誰も傷つけたくないといった綺麗事を考えていたわけではない。私たちの日常は自分の利益のために他人から奪うことによって成り立っている。それは分かっている。しかしだからと言って開き直って人から奪うのは人間として問題があると思うのだ。なるだけ人を傷つけずに何かを得ることができればそれに越したことはない。だがそんなことが出来るのか。
 そうだ。「自分のやりたいことをやれ」と言ってみたらどうだろう。壺の精は誰かの願いを叶えることしか出来ないなら「自分で何かを願え」と言ったら却って何も出来ないのではないか。しかし壺の精の顔を見ると放って置いても何かやらかしそうな面構えである。好き勝手やり始めてそれで誰かが被害を受けたなら、その責任は壺の精にそうさせた自分にあることになる。壺の精が自分の前に現れたのだから、私自身で彼を食い止めたい。
 「願い事は決まったかね?」と壺の精は学生に尋ねた。学生は深く頷きこう言った「ずっと俺のそばにいるように」。「は?」と壺の精は言った。「この願いで俺が奪ったのは他人のところにお前が現れる可能性だ。お前が居るとみんな悩んじまう。俺から離さなければみんな悩まずに済むからな」。壺の精は困り果て「面倒臭い奴に出逢っちまった。俺がお前の願いを奪って、もう一度壺に戻るよ」と言って再び壺の中へと入っていったのである。(597字) 
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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