(問1)
高い志で医学の道を進み、人並外れた努力で上司の都留教授に高く評価された上山医師は、研修医時代に、都留教授が執刀予定の女児を断りなく退院させた。以前同病の子が手術で植物状態となり早世したのを悔やみ、同じ目に遭わせないという思いからの行為だった。都留教授は激怒したが咎めなかった。13年後、上山医師は都留教授のプライドを傷付けたこと謝罪し、同時にこの年月が彼からの教育のための時間であったことを理解した。(199字)
(問2)
私はこの文章から「医師としての心構え」についての強いメッセージを感じた。自分の脳外科医としての将来を投げ打つ覚悟で患者を帰した上山医師も、自分の失敗で一人の子どもの未来を再び失わせるかもしれないリスクを背負ってでも再度執刀しようとした都留教授も、どちらも「患者の幸福を大切にする」「患者の命と健康を守る」という医師としての職務を自分の人生をかけて全うしようとしている点では同じであり、尊敬に値する。
都留教授が自分の執刀予定の患者を帰した上山医師を「骨あるな」と言ったのは、上山医師が自分と同じくらい本気で患者のことを大事にしている点を評価し彼に「医師としての資質」を認めたからであり、上山医師が13年後に都留教授に謝罪したのも、都留教授が自分のプライドをかけて執刀しようとしていた、その本気を身に染みて理解したからであると思う。そして両者の生き様は私に医師としての責任と矜持を教えてくれるのである。
もちろん、医療にはこうした重大な局面だけがあるわけではない。しかし通常の医療行為においてもこうした責任と矜持は必要なことである。患者の命や幸福に寄与するために常に学び続け、自己の判断や処置に責任を持つ。それは医師という職業を選んだ者に与えられた特別な「栄誉」であり、医師を目指す者はその栄誉を負うことのできる存在としての誇りを持たなければならない。私は両医師からそう言われたような気がしたのである。(595字)
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